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 ご連絡が遅くなり申し訳ありません。
 逃げていたのかなんて率直的なことを堂々と聞くんですね。
 確かに私は逃げていた。あなたに、暴行事件のことがバレてしまったからではありません。
 私の話をあなたが聞く前に交換条件を出してもいいですか?
 これまであなたのもとに訪れた目撃者と情報を教えてもらえませんか?
 何故かって? 私は逃げないことにしたんです。
 私が鳳翔くんにしてしまったことはもうかき消せないことだから、でも、鳳翔くんは私から暴力を受けても私のことを信じようとしてくれていた、そのことに、気づいたんです。
 助けたい、今更何をと鳳翔くんに言われるかもしれないけど、鳳翔くんの力になりたいんです。
 だから、教えてください。……ありがとうございます。
 ええ、はい、なるほど。私を含めた三人の目撃情報、協力者が二人、犯人の目撃者が一人ですね。
 教えてくださったので、次は私が話す番ですね。
 スケッチブックを見直していました。そうです。鳳翔くんのものです。
 事件の前日、実は私の家に荷物が届いていました。
 伝票はなかったので、宅配業者の方が届けたものではなかった。
 中に入ってたのは三冊のスケッチブック。すべて鳳翔くんのものです。
 中に書かれていた絵は、私が鳳翔くんの部屋で見たものでした。
 スケッチブックに事件のことは描かれていません。一応あなたにならと本日持ってきました。
 ……一つ言えることがあります。
 これまで会った中の誰かが
 誰かがデマを流しています。
 私の罪を暴いたように、きっと犯人を捜してください。
 あなたにはまだ証言を聞いていない人物がいます。
 その人に近づかないのは偶然ですか? 必然ですか?
 その人物の名前は私には知りえないですが、あなたにお伝えしておきます。
 行くか行かないのかは、あなた次第です。

 ーquestionー
 まだ証言を聞いていない人物。

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 三浦千寿はスケッチブックを置いていった。
 開けるのには躊躇してしまうけど、中を確認することにした。

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 悲報が入った。
 山梨家の家族は全員亡くなった。
 ……三浦千寿の会話からあいつが出てくるなんて思いもしなかった。
 だけど、価値がありそうだ。
 言われた人物に……会いに行こうか。