まずまず、彼と私の結婚には愛などなかった。

だけど、彼は優しくしてくれた。

さすがに、二年間妻として接していた相手が突然死んだら誰だって泣くだろう。

だから、彼が泣いていたのは私が死ぬからではなくではなく、()が死ぬからだ。

「はー」

自然とため息が出てきてしまう。

こんな日々がいつまで続くんだろう。

何度も死を経験したせいか、自分の扱いに鈍くなったと思う。

だから、五回目も夫を庇って死んだ。

仕方ないのだ。

あそこで彼を庇ってなくても、どうせ後で死んでいた。

そうなるなら、夫を庇って私が死んだほうがいいと思った。

おかげでこうやって、時間が巻き戻ってる。

時間が戻ることで彼ともかかわらなくて済む。

「なぁ、本当に結婚しないのか?」

急に部屋に入ってきたと思ったら、目のまえに兄さんの綺麗に整った顔がある。

「兄さん、うるさいですよ」