終業までのわずか5分が、とても長く感じられた。
なんだかんだ言いながら、私も結局は瞬と行動を共にできることを楽しみにしているのだ。
帰りの準備を1番速く終わらせ、1番に教室を出て、1番に学校を出る。
周りに誰もいないのを確認して、やっと瞬に声をかける。
「じゃあ、八宮神社に行こうか」
「おう、行こうぜっ!」
頭上から瞬の威勢の良い声が聞こえる。
瞬が私の目の前にひらりと下りてきて、言った。
「なあ、なんで後半の授業で俺のこと無視したんだよ。寂しいじゃないか」
ぷう、とわざとらしく頬を膨らませた瞬に、きっぱりと簡潔に言い放つ。
「授業中にブツブツ一人言呟いてたらやばいやつでしょうが。もう恥ずかしい思いはしたくありません」
「残念。時すでに遅し」
「あなたのせいでしょっ!!」
盛大にツッコむと同時に、こういうやり取りを自然にできるようになって少し胸が温かくなる。
「えへへ、ツッコみありがとう。生きていた頃みたいで嬉しいや」
その何気ない言葉に胸がつきんと痛む。
瞬も同じことを思っていたのに嬉しいとは感じたが、「生きていた頃」という過去形の言葉が生々しく、心の底に重りがついているみたいにどんどん気持ちが沈んでいった。
まだ外は暑いはずなのに、頬を撫でた風を冷たいと感じた。