というやり取りがあってから1週間。

「なんで、未練が何か分からないのっ?」

私が授業を受けている横で窓の外を見ている瞬に、こそこそ文句を言う。

最初は一緒にいられないという事実に落ち込みこそしたが、ずっと生前と変わらない瞬の態度に、いつの間にか自然体で話せるようになっていた。

「しょうがないだろ。現世に未練が多すぎる」

真面目くさって答えていることに苛立ちを覚える。

「だって瞬が、その、亡くなった……のって2週間前だよ?あと1週間しかないじゃん!」

「困ったー、困ったなー」

「んもう、真面目に考えてよっ!」

「いや、真面目に思い出してさ、みちるに手伝ってもらいながら色々実行してるじゃん?でも、全部違ったんだからしょうがなくね?」

確かに、瞬が言った未練は色々試した。

「東京の遊園地で期間限定のグッズが欲しい」と、瞬が言ったときには、横浜から東京までわざわざ電車で行って、1人分の入園料を払い、グッズを買った。

それで、あとで「うーん、未練、これじゃないわ」と、ばっさり切り捨てられた。

あるときは、「この映画を見たい」と言っていたから、1人分のチケットを買い、よく分からない洋画を見たのに。

「これじゃなかったわ」と、1言で駄目だし。

瞬と一緒にいられるのは嬉しいけれど、こんなことばかりしていていいのだろうか。

瞬が本当にやり残したことがあるのなら、それを私は叶えてあげたい。

「次は、東京スカイツリーに上ってみたいなぁって思うんだけど。あとは、なんだろうなあ。あ、みちる、今度こそ一緒にお風呂でも入る?」

瞬のからかうような声色に、つい声を荒らげてしまった。

「こっちはいつだって真面目なのに、もう!」

ハッとしたときにはもう、既に時遅し。

先生もクラスメイトもポカンとこっちを見ている。

おほん、と先生が咳払いをした後、かしこまって告げる。

「そうか、花山。ちなみに、今先生も真面目に授業をしているぞ」

顔が、これまでにないほど熱くなる。

「あう、すみません……」

肩を縮ませながら謝る。

ただでさえ幼なじみの突然な死によって大分気を遣われているのに、余計な心配をかけたことは確実である。