その歌は、STEが初期の頃に出したアルバムの中に収められている「We are fellow(僕たちは仲間だ)」だった。よく、コンサートの最後にフェローと一緒に歌う歌である。
「あ!これを見てください。」
担当官の1人が、スマホをSTEのみんなの方に向けた。それは、ニュース映像だった。今、この留置場の周辺にはたくさんの人が集まって、We are fellowを歌っている。その人の輪がどんどん広がって行く様子が映し出されていた。STEのメンバーはその映像を見て息をのんだ。
「みんな……。」
「うそ、だろ……。」
「俺、涙出そう。」
光輝、涼、瑠偉がそう言うと、流星が、
「俺は出た。ううっ。」
泣き出した流星の背中を、光輝が微笑みながら撫でた。
ニュース映像の中で、アナウンサーが言った。
「STEのファンたちが、次々にやってきます。あ、横断幕を掲げている人もいますね。えー、私たちはSTEに騙されてなどいない、と書かれています。」
ニュース映像を改めて見ると、フェローたちは横断幕や画用紙を掲げている。STEを解放して、などと書かれていた。
「騙されてなどいない、か。俺たちが詐欺罪で捕まったから。」
大樹が言った。
「ありがたいね。」
光輝が言う。碧央は、
「俺たち、ここから逃げる必要なんてなさそうだな。フェローを信じていれば、きっと出られるよ。」
と言い、瑠偉も、
「うん、そうだね。」
と言った。
そして、ニュースは植木社長を映し出した。STEメンバーと入れ違いに釈放された植木は、STEタワーの前で記者に囲まれている。
「私や会社がどうなっても構いませんが、STEのメンバーだけは守りたい。彼らは一生懸命にやってきました。この地球を守るために、そして、フェローの想いに応えるために。」
植木がそう話した。更に、ニュースでは外国のメディア映像を流した。
「海外でも、STE逮捕のニュースが大きく取り上げられています。そして、続々と各国首脳や国連、NGO関係者からSTEの解放を求める声明が出されています。これは、日本政府がどう対応するのかが注目されます。」
アナウンサーがそう言っている。篤は、
「何か、集まってくれたフェローのみんなの為に出来る事はないかな。」
と言った。
「お礼を言いたいよね。今すぐに。」
光輝もそう言った。すると担当官が、
「では、ここから配信しますか?」
と言った。
「え?いいんですか?」
流星が驚いて聞くと、担当官は、
「どうぞ。僕のスマホを使いましょう。」
と言った。
「でも、そんな事をしてあなたは大丈夫ですか?後でお咎めを受けるのでは?」
流星が言うと、
「いいんです。実は僕もフェローですから。」
担当官がそう言うと、光輝はその担当官に抱き着いて言った。
「ありがとうございます!」
「わあ、いやあ、役得だな。さあ、それでは早速やりましょう。」
STEメンバーは、ササっと1分くらいで打ち合わせをし、スマホに向かって並んだ。
「こんにちは!Save The Earthです。」
皆で挨拶をし、更に流星が続ける。
「僕たちの為に行動してくれたみなさん、祈ってくれたみなさん、気にかけてくれたみなさん、本当にありがとうございます。僕たちは見ての通り、無事です。」
続いて篤が言う。
「集まってくれたみなさんの為に、僕たちがここからパフォーマンスを披露します。外には聞こえないかもしれないけど、心は一つ!」
そして涼も続ける。
「それでは、energyとWe are fellowの2曲、歌います。」
もう1人の担当官のスマホから曲を流してもらい、STEは歌いながらダンスを披露した。外にいるフェローたちにもすぐにこの情報が伝わり、皆スマホで配信を見た。そして、歌が終わると外からの大きな歓声がSTEの耳に届いた。
海外のニュースでも、このSTEのパフォーマンスと集まったフェローたちの映像が流れた。SNS上でも、たくさんの人が日本政府を非難した。中には著名人の投稿もあった。
「総理、このままではまずいのでは?」
総理大臣室で官房長官がそう切り出した時、外務大臣が入って来た。
「失礼します。各国大使館から抗議の電話が殺到しています。いかがいたしましょう?」
「うーむ。忌々しいSTEめ。これではまるで私が悪者ではないか。」
総理大臣が言う。
「やはり、すぐに釈放した方がよろしいのでは?」
外務大臣が言うと、総理大臣は、
「だが、周りに言われてほいほいと釈放したのでは、政府の威信が保てないではないか。」
と言った。だが官房長官が、
「ですが、結局罪状もでっち上げですから、そう長くは拘留しておけません。」
と言うと、総理大臣は、
「何か、やつらの弱みはないのか?何か悪い事の1つや2つ、しているだろう。」
と叫ぶように言った。しかし官房長官は、
「いえ、調べさせましたが、何も出ませんでした。」
と言った。
「政治家なら、必ず何か出るのだがな。」
総理大臣は腕組みをして目をつぶった。そして、そのまま天井を仰いだ。
「記者会見を開く。手配してくれ。」
総理大臣がそう言い、
「はい。」
官房長官が答えた。
そうして、総理大臣の記者会見が行われた。
「たった今、STEを解放するよう警視庁に通達致しました。多くの方にご心配をおかけしました。日本国を代表して、陳謝いたします。」
総理大臣はそう言って頭を下げた。記者が質問する。
「詐欺罪という事でしたが、疑いは晴れたのですか?」
「はい。この度は、警視庁の早合点と申しますか、勇み足と申しますか、大変遺憾ではありますが、合法的な措置であったという事ですので、どうか皆様にはご承知おきくださいますよう。」
それから、記者からいくつもの質問を浴びた総理大臣だったが、ろくに答えず早々に立ち去ってしまったのであった。
「なーにが勇み足だよ。政府が無理やり逮捕させたくせに。」
STEを迎えに行くために車を運転していた内海が、ラジオで会見の様子を聞いてそう独り言ちた。
「あ!これを見てください。」
担当官の1人が、スマホをSTEのみんなの方に向けた。それは、ニュース映像だった。今、この留置場の周辺にはたくさんの人が集まって、We are fellowを歌っている。その人の輪がどんどん広がって行く様子が映し出されていた。STEのメンバーはその映像を見て息をのんだ。
「みんな……。」
「うそ、だろ……。」
「俺、涙出そう。」
光輝、涼、瑠偉がそう言うと、流星が、
「俺は出た。ううっ。」
泣き出した流星の背中を、光輝が微笑みながら撫でた。
ニュース映像の中で、アナウンサーが言った。
「STEのファンたちが、次々にやってきます。あ、横断幕を掲げている人もいますね。えー、私たちはSTEに騙されてなどいない、と書かれています。」
ニュース映像を改めて見ると、フェローたちは横断幕や画用紙を掲げている。STEを解放して、などと書かれていた。
「騙されてなどいない、か。俺たちが詐欺罪で捕まったから。」
大樹が言った。
「ありがたいね。」
光輝が言う。碧央は、
「俺たち、ここから逃げる必要なんてなさそうだな。フェローを信じていれば、きっと出られるよ。」
と言い、瑠偉も、
「うん、そうだね。」
と言った。
そして、ニュースは植木社長を映し出した。STEメンバーと入れ違いに釈放された植木は、STEタワーの前で記者に囲まれている。
「私や会社がどうなっても構いませんが、STEのメンバーだけは守りたい。彼らは一生懸命にやってきました。この地球を守るために、そして、フェローの想いに応えるために。」
植木がそう話した。更に、ニュースでは外国のメディア映像を流した。
「海外でも、STE逮捕のニュースが大きく取り上げられています。そして、続々と各国首脳や国連、NGO関係者からSTEの解放を求める声明が出されています。これは、日本政府がどう対応するのかが注目されます。」
アナウンサーがそう言っている。篤は、
「何か、集まってくれたフェローのみんなの為に出来る事はないかな。」
と言った。
「お礼を言いたいよね。今すぐに。」
光輝もそう言った。すると担当官が、
「では、ここから配信しますか?」
と言った。
「え?いいんですか?」
流星が驚いて聞くと、担当官は、
「どうぞ。僕のスマホを使いましょう。」
と言った。
「でも、そんな事をしてあなたは大丈夫ですか?後でお咎めを受けるのでは?」
流星が言うと、
「いいんです。実は僕もフェローですから。」
担当官がそう言うと、光輝はその担当官に抱き着いて言った。
「ありがとうございます!」
「わあ、いやあ、役得だな。さあ、それでは早速やりましょう。」
STEメンバーは、ササっと1分くらいで打ち合わせをし、スマホに向かって並んだ。
「こんにちは!Save The Earthです。」
皆で挨拶をし、更に流星が続ける。
「僕たちの為に行動してくれたみなさん、祈ってくれたみなさん、気にかけてくれたみなさん、本当にありがとうございます。僕たちは見ての通り、無事です。」
続いて篤が言う。
「集まってくれたみなさんの為に、僕たちがここからパフォーマンスを披露します。外には聞こえないかもしれないけど、心は一つ!」
そして涼も続ける。
「それでは、energyとWe are fellowの2曲、歌います。」
もう1人の担当官のスマホから曲を流してもらい、STEは歌いながらダンスを披露した。外にいるフェローたちにもすぐにこの情報が伝わり、皆スマホで配信を見た。そして、歌が終わると外からの大きな歓声がSTEの耳に届いた。
海外のニュースでも、このSTEのパフォーマンスと集まったフェローたちの映像が流れた。SNS上でも、たくさんの人が日本政府を非難した。中には著名人の投稿もあった。
「総理、このままではまずいのでは?」
総理大臣室で官房長官がそう切り出した時、外務大臣が入って来た。
「失礼します。各国大使館から抗議の電話が殺到しています。いかがいたしましょう?」
「うーむ。忌々しいSTEめ。これではまるで私が悪者ではないか。」
総理大臣が言う。
「やはり、すぐに釈放した方がよろしいのでは?」
外務大臣が言うと、総理大臣は、
「だが、周りに言われてほいほいと釈放したのでは、政府の威信が保てないではないか。」
と言った。だが官房長官が、
「ですが、結局罪状もでっち上げですから、そう長くは拘留しておけません。」
と言うと、総理大臣は、
「何か、やつらの弱みはないのか?何か悪い事の1つや2つ、しているだろう。」
と叫ぶように言った。しかし官房長官は、
「いえ、調べさせましたが、何も出ませんでした。」
と言った。
「政治家なら、必ず何か出るのだがな。」
総理大臣は腕組みをして目をつぶった。そして、そのまま天井を仰いだ。
「記者会見を開く。手配してくれ。」
総理大臣がそう言い、
「はい。」
官房長官が答えた。
そうして、総理大臣の記者会見が行われた。
「たった今、STEを解放するよう警視庁に通達致しました。多くの方にご心配をおかけしました。日本国を代表して、陳謝いたします。」
総理大臣はそう言って頭を下げた。記者が質問する。
「詐欺罪という事でしたが、疑いは晴れたのですか?」
「はい。この度は、警視庁の早合点と申しますか、勇み足と申しますか、大変遺憾ではありますが、合法的な措置であったという事ですので、どうか皆様にはご承知おきくださいますよう。」
それから、記者からいくつもの質問を浴びた総理大臣だったが、ろくに答えず早々に立ち去ってしまったのであった。
「なーにが勇み足だよ。政府が無理やり逮捕させたくせに。」
STEを迎えに行くために車を運転していた内海が、ラジオで会見の様子を聞いてそう独り言ちた。