「考えたら、変な集まりですね」

 最後の日の夜、眼鏡がそう漏らした。
 出身も違えば、年齢や経歴も違う。

 普通ならば出会わないようなオレたちが、こうして一週間も同じ時間を過ごしてきた。
 任務は明日の朝まで。そこで解放となる。

「確かに。やっと帰れるな」

 変な達成感が酒も入っていないのに、饒舌にさせた。

「眼鏡の大学一流じゃねーか。なのに、なんでこんな仕事してんだよ」

 なんとなく始まった身の上話。
 深夜だというのに、オレたちはただ無邪気に盛り上がる。

「一度就職しましたが、上司と折が合わず。精神的にダメになって働けなくなって、ですね」
「上司クソだな。オレも大学は出たが就活全部ダメで、今この有様さ。ハートは?」
「医師免許に三回落ちちゃって、親から勘当されたんだ」
「医師⁉」

 人は見た目に寄らないというか、医師免許ってことはそっち系の大学だったってことだよな。
 二人とも、俺より頭いいじゃねーか。

 でもそれでも人生に失敗するのか。
 なんだかなぁ。

「似たり寄ったりだな」
「まぁ、こんな仕事に参加してる時点で同じようなモノですよ」
「言えてるっす」

 これだけ話せる仲間や友だちなど今までいたことはない。
 そう考えると残念な気もするが、所詮は闇バイトで集まった仲間。

 深くかかわらない方がいいに決まってる。
 ため息交じりに別荘を見れば、その中がやや明るく見えた。

「お? 人か?」

 そう声を上げれば、二人もすぐさま別荘を覗き見る。

「何か見えましたか?」
「ん? いつもと一緒じゃないっすか」
「見間違えか?」

 確かにあの分厚いカーテンから少し光が漏れていたように思えたのだが、再び見ればこの一週間何も変わり映えのしない別荘があるだけだった。

「おかしいな。光が漏れてた気がしたんだが」
「どうでしょう。見間違えでも、一応報告してみますか」

 そう言いながら眼鏡がいつものように定期報告をする。
 しかし問題はその先だった。

「ん?」
「どうした」

 メール送信画面を見つめたまま、眼鏡が首をかしげる。
 スマホをのぞき込めば、送信失敗とあり、画面には紙飛行機がUターンしてくるのが見えた。

 今までこんなことは一度もなかった。
 オレは急いで自分のスマホを確認するも、電波はある。

「おいおいおいおい」

 嫌な予感がして自分のスマホから依頼人にメールを送るも、同じように失敗とあるだけ。

「まさか、こんな時に飛んだんじゃねーよな」

 先ほどまでの楽しい打ち上げのような雰囲気は、一瞬でかき消されていた。