未だに人気がある、山深い高級別荘地。

 その最奥に、オレたちが依頼された別荘はあった。
 三角の屋根が特徴的で、広いデッキのあるその別荘は、確かに庶民のオレからしたら値段も想像は出来ないくらいの大きさだった。

 ただ窓には分厚く赤いカーテンが敷かれ、中の様子を窺《うかが》うことは出来ない。

「とりあえず、どうする?」

 死角となるやや離れた木陰に車を停め、別荘を見た。
 しかし到着が深夜になったせいか、電気も消えてしまっている。

「今依頼人には到着報告はしました。このまま観察を続けて下さいとのことです」
「日が昇るまでまだ四時間ほどあるから、とりあえず仮眠するか」

 いくらなんでも、こんな時間に中の奴らは動かないだろ。
 
「休憩時間を含むとなっているので、交代で休む方がいいでしょう」
「おいおい、さすがに起きてこねーだろ?」
「ですが、契約は契約です」

 見た目通りというか、なんというか。
 眼鏡は神経質だよな。
 オレたちにまで監視があるわけでもないのに、そこはテキトーでいいだろうに。

「はいはい。んじゃ、今日はオレが先に監視しとくから寝てくれ」
「ええ、いいんすか?」
「運転して疲れただろ。んで、朝になったら報告するから、そん時眼鏡が依頼人にメール報告してくれ。オレはそういうの苦手だ」
「了解しました」

 二人の寝息が聞こえてくるのには、さほどの時間もかからなかった。
 こんな山奥の、知らない奴らと一緒で、安心して寝れるもんだな。
 無防備すぎるだろ。

 そうは言っても、別に何をするわけでもない。
 ただ窓枠に肘をつき、ボーっと別荘を眺めていた。