それに先生の誤解が解けたからといってクラスのみんなの見方が変わるわけではないから、明日も居づらいのは変わらない。
 日常生活を送るだけでも苦しいのに、学校での居場所がなくなってしまったらどうしたらいいんだろう。真冬くんとも話したいのに。
 もう全部投げ出してしまいたい。どうせ将来も楽しく過ごせないのなら、頑張る今なんてない。
 この後家に帰っても、どうせなかなか休めない。休めたとしても、疲れが完全には取れない。もうわかってる。
 明日学校に行くだけでまた疲れる。帰る頃にはエネルギーはゼロどころかマイナス。
 こんなんじゃいつか限界が来るに決まってる。
 もう疲れた。助けて……。
 初めて、そんな率直な気持ちが生じた。
 冷たくなってきた風が頬を撫で、私の髪をふわっと舞い上げる。これから寒くなっていくから、日常生活をするのがよりしんどくなっていくんだろうな。
 たとえ変な噂が立たなかったとしても、ずっと我慢するなんて無理だったと思う。
 電車に乗ってから、真冬くんに連絡するかどうか迷っていた。でもできれば直接話したいから、スマホを鞄にしまった。
 話す機会はあるのかな。
 私が勇気を出さないとダメだ。チャンスは待っているだけじゃ来ない。行動しないと変わらない。
 どうせみんなから悪い人だと思われているんだから、これから私が目立つ行動をして嫌われてももう関係ない。
 なによりも、真冬くんにつらい思いをしてほしくない。振り返ってみると、真冬くんの笑顔を見たことは全くと言っていいほどなかった。
 なにが真冬くんから笑顔を奪ったんだろう。どうして真冬くんは苦しんでいるんだろう。
 私が苦しいのなんて、もうどうだっていい。真冬くんのことを救えるのなら。
 私が完全に、頑張れなくなる前に。
 ……だけど本当は、自分の居場所を真冬くんに求めているだけだった。



 真冬くんは教室にいるとき、その表情からはいまいち感情が読み取れない。感情が失われているようにすら思えてしまう。
 感情が見えたとしても、あのときのように寂しそうな、悲しそうなものばかり。
 話したい、と思うのに、人が多く息苦しい教室ではその気になれなかった。
 そういえば、初めて真冬くんと話したとき、真冬くんは図書室にいたと言っていた。だから、放課後に図書室に行けば真冬くんと会えるかもしれない。ただあそこも人が少ないわけではないから……。