その声を聞くと、また頑張ろうって、そんな気持ちにさせてくれる。どうしてそれだけで、私の心は満たされるんだろう。そして、また聞きたいって、そのたびに思う。

 一方で、私を取り巻く環境が徐々に厳しくなっていっているような気がした。
 原因はなにかわからない。
 だけど私と「話す必要がないから話さない」でなくて、「話したくないから話さない」に変化しているように感じる。
 今まで雑談程度だけど話していた人たちも声をかけてくれない。たまに私から声をかけてもどこか気まずそうにしている。そして常に誰かに見られているような気がする。
 私自身はなにかした覚えはないのに。
 なにかが起こっている。
 教室の居心地が日に日に悪くなっていった。
 誰も話しかけてこないのに、みんなに意識されている。
 なんで?私、なにかした?
 違和感を持ちつつ、今日も登校してきた。登校する道の途中の紅葉もだいぶ色付いてきていた。
「あ、おはよう、真冬くん」
「おはよう……」
 いつものように返してくれたけれど、どこか周りを気にするような素振りを見せた。
 まさか、真冬くんまで……?気になったけれど、真冬くんの迷惑になりたくはないからなにも言わなかった。
 でも真冬くんには嫌われたくない……!
 そのためにはどうして私が避けられているのか理由を知らないとはいけないわけだけど、それを誰かに聞く勇気は出ない。
 だとしたらみんなの態度や話から読み取るしかない。
 昼休み、廊下を歩いていたら、どこかのクラスの女の子二人が歩きながら話すのがすれ違いざまに聞こえてきた。
「ねえ知ってる?二組の七井って言う人、中学のときクラスの子のこといじめてたんだって」
「あ、それうちも聞いた。だからこないだ先生に呼び出されたって」
 ――え?
 思わず立ち止まりかけたけれど、目立つから歩き続けた。
 なにそれ、どういうこと?
 中学のとき私が誰かをいじめたことなんてないはずだし、そもそもそれで今先生に呼び出されるのはおかしい。
 あのときの二木先生の話を思い返してまると、確実なのは、誰かが「このクラスでいじめがある」と言ったこと。
 先生に呼ばれたのは事実だけど、それを知っているのは真冬くんと先生だけだし、二人が他言するとは思えない。
 もしかすると……その証言した「誰か」が「七井さんなら知っているはず」と言って、私と先生が話すことを差し向けた?そしてそれを利用して、あらぬ噂を作った?