「そ、そうかな……」
真冬くんが驚いたように顔を上げた。整った顔立ちと澄んだ瞳があらわになって、思わず息を呑む。
「そうだよ。私なんか……」
いっつも周りに合わせてしまって、疲れてしまう。
と言いかけて、言葉を飲み込んだ。私のことを話しても、真冬くんにはプラスにならない。
「……な、七井さんは、なにしてたの?」
せっかく飲み込んだのに、私の方に話を振られてびっくりした。私が黙り込んだせいだ。
「あっ、もちろん、言いたくなかったら大丈夫だよ」
私が驚いたのを見てか、真冬くんが続けてそう言葉をかけてくれて、私は焦って口を開いた。
「あっ、ううん、大丈夫だよ。私は先生とちょっとお話してたんだ」
「先生と……?」
「うん。ちょっと、いろいろあって」
話の内容は曖昧に濁した。誤魔化し方が下手。
いじめのことはあまり漏らしていい話ではないと思う。それに話してしまうと私の気持ちも言ってしまいそうだった。
「……そっか、大変だったね」
「えっ、ううん!大丈夫だよ!」
「……ほんと?」
真冬くんが心配そうに伺ってくる。心を見透かされているような気がして、思わず目を逸らした。
「……本当だよ。だから、心配しないで」
「……でも、七井さん、すごく疲れてるように見える……」
「……!」
真冬くんの視線から逃げたい、という思いと、話を聞いてもらいたい、という気持が交錯して、私はなにもできない。
どうしよう……。
「……ごめん」
悩んだ末に、それだけ言い残して、私は教室を飛び出した。
真冬くんのことを傷つけてしまったかもしれない。真冬くんが自分を責めているかもしれない。
心優しい人が差し伸べてくれた手を、私は払い除けてしまった。
真冬くんは悪くない。悪いのは私。なんで私はこうなんだろう。
夜になっても、普段は勉強している時間なのに、私は自分を責め続けた。
自分を助けてくれようとした人を傷つけてしまうなんて、最低だ。
だけどもし私が自分のことを話していたらどうなっていただろう。真冬くんはきっと聞いてくれる。だけど、だからこそ、重い話を背負わせたくなかった。
それに聞いてくれても、内心では私に呆れてしまうかもしれない。真冬くんに嫌われたくない。
……でも、私が選んだ行動も真冬くんに嫌われてもおかしくない。結局私は誰にも好かれないんだ、自分のせいで……。
諦めかけていたとき、スマホの通知音が響いた。
クラスラインかと思い画面を見て、私は目を見張る。真冬くんからだった。クラスラインから追加してくれたらしかった。
『夜遅くにごめんなさい、四季真冬です』
『嫌な思いをさせてしまってごめんね』
真冬くんが驚いたように顔を上げた。整った顔立ちと澄んだ瞳があらわになって、思わず息を呑む。
「そうだよ。私なんか……」
いっつも周りに合わせてしまって、疲れてしまう。
と言いかけて、言葉を飲み込んだ。私のことを話しても、真冬くんにはプラスにならない。
「……な、七井さんは、なにしてたの?」
せっかく飲み込んだのに、私の方に話を振られてびっくりした。私が黙り込んだせいだ。
「あっ、もちろん、言いたくなかったら大丈夫だよ」
私が驚いたのを見てか、真冬くんが続けてそう言葉をかけてくれて、私は焦って口を開いた。
「あっ、ううん、大丈夫だよ。私は先生とちょっとお話してたんだ」
「先生と……?」
「うん。ちょっと、いろいろあって」
話の内容は曖昧に濁した。誤魔化し方が下手。
いじめのことはあまり漏らしていい話ではないと思う。それに話してしまうと私の気持ちも言ってしまいそうだった。
「……そっか、大変だったね」
「えっ、ううん!大丈夫だよ!」
「……ほんと?」
真冬くんが心配そうに伺ってくる。心を見透かされているような気がして、思わず目を逸らした。
「……本当だよ。だから、心配しないで」
「……でも、七井さん、すごく疲れてるように見える……」
「……!」
真冬くんの視線から逃げたい、という思いと、話を聞いてもらいたい、という気持が交錯して、私はなにもできない。
どうしよう……。
「……ごめん」
悩んだ末に、それだけ言い残して、私は教室を飛び出した。
真冬くんのことを傷つけてしまったかもしれない。真冬くんが自分を責めているかもしれない。
心優しい人が差し伸べてくれた手を、私は払い除けてしまった。
真冬くんは悪くない。悪いのは私。なんで私はこうなんだろう。
夜になっても、普段は勉強している時間なのに、私は自分を責め続けた。
自分を助けてくれようとした人を傷つけてしまうなんて、最低だ。
だけどもし私が自分のことを話していたらどうなっていただろう。真冬くんはきっと聞いてくれる。だけど、だからこそ、重い話を背負わせたくなかった。
それに聞いてくれても、内心では私に呆れてしまうかもしれない。真冬くんに嫌われたくない。
……でも、私が選んだ行動も真冬くんに嫌われてもおかしくない。結局私は誰にも好かれないんだ、自分のせいで……。
諦めかけていたとき、スマホの通知音が響いた。
クラスラインかと思い画面を見て、私は目を見張る。真冬くんからだった。クラスラインから追加してくれたらしかった。
『夜遅くにごめんなさい、四季真冬です』
『嫌な思いをさせてしまってごめんね』



