「このクラスでいじめなんてあるんですか?」
「本当のことかはわからないんだが……一部の生徒から指摘があったんだ」
私が見たところそんな人はいないと思う。でも、それはあくまで私が知っているクラスメイトたちの姿だから、本当のところはわからない。
「まあ、知らないならいいんだ。ところで、せっかくだから、七井はなにか困ってることとかはないか?いつも疲れてるようにも見えるけど」
「え……」
先生にもばれているのだろうか。私の疲れって、周りから見てもわかるほどだったんだ。
でも、なんで疲れているかを先生に話す気にはなれない。どうせわかってくれない。
二木先生だって、学校側の人である以上は、私からすれば、急かして追い詰めてくる側の人に見えてしまう。
それに、先生はきっと、私に必要な答えはくれない。
「……いえ、大丈夫です」
「そうなのか?」
「はい。いつものことなので」
「じゃあ、なにかあったら気軽に相談してくれ。悪かったな、呼び出して」
「はい、ありがとうございました」
「こちらこそ」
先生と別れて教室へ戻る。
「はぁ~……」
誰もいないのをいいことに、また大きな溜息をついた。机に突っ伏して、窓の外をわけもなく見つめる。
……疲れすぎて、帰る気力も沸かない。
先生が言っていたいじめのことよりも、「しっかりしてる」「疲れているようにも見える」という言葉がこびりついていた。
しっかりしてるわけじゃない。我慢してるだけ。それが周りから真面目に見えるなら、私はずっと耐え続けなければいけないのだろうか。
どうして私が我慢し続けてやっとできることが、みんなには当たり前のようにできるんだろう。どうして私はできないんだろう。
情けないし、恥ずかしい。
すると突然教室の扉が開く音がして、私は反射的に顔を上げた。扉の開け方は控えめだった。
入ってきたのは、真冬くん。
「あれっ、真冬くん。なにしてたの?」
私は思わず声をかけた。普段自分から誰かに声をかけるなんてあまりないのに。
「あ、えっと、図書室に行ってて」
と、真冬くんはややうつむきながら答える。
「なにか借りてきたの?」
「ううん、借りないで、図書室で一冊読んできたよ」
「えっ」
真冬くんが本を一冊読み終わるほどの時間を私は教室と面談室で過ごしていたんだ。でも、そうだとしても……
「読むの早いね」
「そんなことないよ。短い本だったから、普通の人なら一時間弱で読み終わるんじゃないかな……。僕は読むの遅い方だよ」
「そうなんだ」
確かに、真冬くんが読むのが早いイメージはない。喋り方だってこんなにおっとりしているのだから。
「いいなぁ……」
「えっ?」
今度は真冬くんが驚いた。驚く声もちょっと可愛い。
「自分のペースで過ごせるのって羨ましい……」
「本当のことかはわからないんだが……一部の生徒から指摘があったんだ」
私が見たところそんな人はいないと思う。でも、それはあくまで私が知っているクラスメイトたちの姿だから、本当のところはわからない。
「まあ、知らないならいいんだ。ところで、せっかくだから、七井はなにか困ってることとかはないか?いつも疲れてるようにも見えるけど」
「え……」
先生にもばれているのだろうか。私の疲れって、周りから見てもわかるほどだったんだ。
でも、なんで疲れているかを先生に話す気にはなれない。どうせわかってくれない。
二木先生だって、学校側の人である以上は、私からすれば、急かして追い詰めてくる側の人に見えてしまう。
それに、先生はきっと、私に必要な答えはくれない。
「……いえ、大丈夫です」
「そうなのか?」
「はい。いつものことなので」
「じゃあ、なにかあったら気軽に相談してくれ。悪かったな、呼び出して」
「はい、ありがとうございました」
「こちらこそ」
先生と別れて教室へ戻る。
「はぁ~……」
誰もいないのをいいことに、また大きな溜息をついた。机に突っ伏して、窓の外をわけもなく見つめる。
……疲れすぎて、帰る気力も沸かない。
先生が言っていたいじめのことよりも、「しっかりしてる」「疲れているようにも見える」という言葉がこびりついていた。
しっかりしてるわけじゃない。我慢してるだけ。それが周りから真面目に見えるなら、私はずっと耐え続けなければいけないのだろうか。
どうして私が我慢し続けてやっとできることが、みんなには当たり前のようにできるんだろう。どうして私はできないんだろう。
情けないし、恥ずかしい。
すると突然教室の扉が開く音がして、私は反射的に顔を上げた。扉の開け方は控えめだった。
入ってきたのは、真冬くん。
「あれっ、真冬くん。なにしてたの?」
私は思わず声をかけた。普段自分から誰かに声をかけるなんてあまりないのに。
「あ、えっと、図書室に行ってて」
と、真冬くんはややうつむきながら答える。
「なにか借りてきたの?」
「ううん、借りないで、図書室で一冊読んできたよ」
「えっ」
真冬くんが本を一冊読み終わるほどの時間を私は教室と面談室で過ごしていたんだ。でも、そうだとしても……
「読むの早いね」
「そんなことないよ。短い本だったから、普通の人なら一時間弱で読み終わるんじゃないかな……。僕は読むの遅い方だよ」
「そうなんだ」
確かに、真冬くんが読むのが早いイメージはない。喋り方だってこんなにおっとりしているのだから。
「いいなぁ……」
「えっ?」
今度は真冬くんが驚いた。驚く声もちょっと可愛い。
「自分のペースで過ごせるのって羨ましい……」



