「真冬くん……」
追いかけてきてくれた……?
「早いかもしれないけど、今、話してほしい……」
真冬くんは私の隣に来て、そう告げた。
「温華ちゃんに、つらい思いを抱えていてほしくない……!」
透き通るような茶色く大きい瞳で、真冬くんは真っ直ぐに私を見つめてくる。
本当は、ずっと言いたかった。でも、私の変なプライドが邪魔をしていた。
今はもう、隠す気は起きなかった。
「……ずっと、苦しかった……」
一言口にしただけで、私の目から涙が一粒零れ落ちた。
「みんなが当たり前のようにやってることが、行動が遅くて頭も速く回らないせいで
私には簡単にできなくて、なんで私はこうなんだろうってずっと悩んでて、つらくて……」
真冬くんはなにも言わずに私のことを見て、聞き続けてくれていた。
「ずっと心は独りで頑張って、なんとか学校でも無事に生きてこれてたのに……。
それなのに、私がいじめをしてたなんて意味わかんない噂が流れて、ネットにも晒されて……こんなの、耐えられるわけないじゃん……!」
涙が止まらない。感情が止められない。ずっと我慢していたのに。私は、こんなに弱かったんだ。
「こんなんでボロボロになっちゃう自分が嫌い……。私は優しくなんかない、弱くて、情けない人間なんだよ……」
自分も嫌だったし、みんなのことも嫌だった。勝手に私を悪者にして、突き放して。だけどみんなを嫌だと思ってしまう自分がいちばん嫌いだった。
「……温華ちゃんは、優しいし、強くて、かっこいいよ」
「なんで……」
「だって、話を聞いてくれただけじゃなくて、いつも誰のことも傷つけないようにしてて、勉強も頑張ってて……。生きてるだけでえらいのに、独りでも頑張ってるなんて、ほんとにすごいよ」
いつもよりも滑らかな口調で、はっきりした声。
真冬くんはまた私のことを肯定して、受け入れてくれた。
「みんなと同じことがみんなと同じようにできなくたって、悪いことじゃない。温華ちゃんは、人一倍丁寧で、優しいから、慎重になるだけだと思う」
「……そう、なのかな」
「うん」
初めて、頑張っていることが報われたと感じた。
温かくて、棘がない、包みこんでくれるような言葉。
固く閉じていた私の心の鍵を、真冬くんが開けてくれた。
「……温華ちゃん」
季節外れだけれど、春の訪れを告げるような、固まった心を溶かしてくれるような声。
「僕は、なにがあっても、温華ちゃんの味方だから……。僕なんかじゃ、足りないかもしれないけど」
「ううん。私は、真冬くんにいちばん味方でいてほしい……」
私の心を救ってくれて、私が真冬くんに言いたくても言えなかった言葉をくれて。
真冬くんが近くにいてくれると、それだけで安心する。
だから、「僕なんか」なんて言わないで。
私と真冬くんは、ちょっと似ているみたいだった。
「真冬くん。ずっと隣に、いてくれる?」
「うん」
真冬くんは、力強くこくりとうなずいてくれた。
「ありがとう……」
大丈夫、私なら、私たちなら、きっと。
もう、孤独じゃないから。
心が軽くなると同時に、今度はそこで別のなにかが芽吹いた。
それは、ずっと不安だった未来への〝希望〟。
ずっと雪に埋もれていた私の心が、ようやく春を迎えられた。
追いかけてきてくれた……?
「早いかもしれないけど、今、話してほしい……」
真冬くんは私の隣に来て、そう告げた。
「温華ちゃんに、つらい思いを抱えていてほしくない……!」
透き通るような茶色く大きい瞳で、真冬くんは真っ直ぐに私を見つめてくる。
本当は、ずっと言いたかった。でも、私の変なプライドが邪魔をしていた。
今はもう、隠す気は起きなかった。
「……ずっと、苦しかった……」
一言口にしただけで、私の目から涙が一粒零れ落ちた。
「みんなが当たり前のようにやってることが、行動が遅くて頭も速く回らないせいで
私には簡単にできなくて、なんで私はこうなんだろうってずっと悩んでて、つらくて……」
真冬くんはなにも言わずに私のことを見て、聞き続けてくれていた。
「ずっと心は独りで頑張って、なんとか学校でも無事に生きてこれてたのに……。
それなのに、私がいじめをしてたなんて意味わかんない噂が流れて、ネットにも晒されて……こんなの、耐えられるわけないじゃん……!」
涙が止まらない。感情が止められない。ずっと我慢していたのに。私は、こんなに弱かったんだ。
「こんなんでボロボロになっちゃう自分が嫌い……。私は優しくなんかない、弱くて、情けない人間なんだよ……」
自分も嫌だったし、みんなのことも嫌だった。勝手に私を悪者にして、突き放して。だけどみんなを嫌だと思ってしまう自分がいちばん嫌いだった。
「……温華ちゃんは、優しいし、強くて、かっこいいよ」
「なんで……」
「だって、話を聞いてくれただけじゃなくて、いつも誰のことも傷つけないようにしてて、勉強も頑張ってて……。生きてるだけでえらいのに、独りでも頑張ってるなんて、ほんとにすごいよ」
いつもよりも滑らかな口調で、はっきりした声。
真冬くんはまた私のことを肯定して、受け入れてくれた。
「みんなと同じことがみんなと同じようにできなくたって、悪いことじゃない。温華ちゃんは、人一倍丁寧で、優しいから、慎重になるだけだと思う」
「……そう、なのかな」
「うん」
初めて、頑張っていることが報われたと感じた。
温かくて、棘がない、包みこんでくれるような言葉。
固く閉じていた私の心の鍵を、真冬くんが開けてくれた。
「……温華ちゃん」
季節外れだけれど、春の訪れを告げるような、固まった心を溶かしてくれるような声。
「僕は、なにがあっても、温華ちゃんの味方だから……。僕なんかじゃ、足りないかもしれないけど」
「ううん。私は、真冬くんにいちばん味方でいてほしい……」
私の心を救ってくれて、私が真冬くんに言いたくても言えなかった言葉をくれて。
真冬くんが近くにいてくれると、それだけで安心する。
だから、「僕なんか」なんて言わないで。
私と真冬くんは、ちょっと似ているみたいだった。
「真冬くん。ずっと隣に、いてくれる?」
「うん」
真冬くんは、力強くこくりとうなずいてくれた。
「ありがとう……」
大丈夫、私なら、私たちなら、きっと。
もう、孤独じゃないから。
心が軽くなると同時に、今度はそこで別のなにかが芽吹いた。
それは、ずっと不安だった未来への〝希望〟。
ずっと雪に埋もれていた私の心が、ようやく春を迎えられた。



