どうして、そんなに優しいの……?
 もしかしたら、その周りへの優しさが、真冬くん自身を縛りつけてしまったのかもしれない。
「……私は真冬くんが思ってるほど、優しい人じゃないよ。だけど……真冬くんが苦しんでるのを放っておきたくない。だから、私ができることならなんでも言ってほしいし、真冬くんの気持ち、聞かせてほしい」
 私がそう言い切ると、しばらく沈黙が流れた。私の気持ちは、伝わらなかったのかな……。
 不安になったそのとき、真冬くんが顔を上げた。
「……じゃあ、約束、してくれる?」
「約束……?」
「えっと、僕が話したら、温華ちゃんもいつか自分のことを話してくれる、って」
「え……」
 そんなの、ずるい。私は自分のこと――つらさや痛みを、話したくない。だって、話したら、真冬くんに嫌われてしまうかもしれないし、傷つけてしまうかもしれない。
 でも、聞いてほしい。
 ずっと我慢し続けるのは、もう嫌だ。
 私がそれを話したい人は、ほかでもない真冬くんだった。
「……いつか、だよね」
「うん。いつでもいいよ」
「だったら……うん。約束するよ」
「ありがとう。ごめんね……」
 今はまだ、どうやって話せばいいのか、自分の心の整理ができていない。
 表面だけの関係を続けてきた私にとって、自分の気持ちを話すことは、相当高いハードルがある。
「あ、じゃあ……ちょっと、こっち来て」
「うん」
 今は、私が真冬くんの話を聞くときだ。
 真冬くんについていくと、滑り台とベンチだけがある小さな公園に着いた。
 二人並んで、そのやや古びたベンチに座る。
 閑散とした住宅街の中に、こんなところがあったなんて知らなかった。
「……温華ちゃんも、接しててわかるかもしれないけど……僕は、他の男の子とは、全然……性格が違うんだよね」
 冷たい秋の空気の中に、真冬くんがぽつりと言葉を落とした。
「あと、性格だけじゃなくて、好みとか、喋り方とか、言葉遣いとか……。なんか、そういうのがほとんどの男の子とは合わなくて、でも女の子と積極的に仲良くできるわけでもなくて……」
 真冬くんはうつむき、どこか寂しそうな表情で言葉を紡ぐ。
「だから、中学生のときは友達を作れなくて、高校では作る気も起こらなくて……」
 いつも暗い顔をして、元気が見れなかった教室での真冬くん。私にはそれが、諦めているようにも見えていた。
「仲がいい人はできなくて、誰にも振り向いてもらえない日々になって。……僕のせいなんだけどね」