「……す、スイ、ちょっと休憩しよう」
過酷な道を歩き続けたことで、自分の熱気で頭がぼーっとしてきた。
このままでは事故に繋(つな)がりかねない。
僕とスイは、比較的大きな木の根元に腰を下ろし、一息つくことにした。
道は悪いが空気は澄んでいて、深呼吸をするごとに身体が浄化されていく気がする。
風が吹くと、木々の隙間からこぼれる光が地面を彩り美しい。
――とはいえ、汗をかいて体力を消耗していることに変わりはなく。
「喉が渇いた……。なにがあるか分からないし、あまり魔力を消費したくないけど……でも水分補給は大事だよね。――そうだ、せっかくだしあれを試してみよう!」
「あれ、とは?」
「いいから見てて!」
僕はそこらへんに落ちていた木の枝を拾い集め、一か所にまとめる。
そして「スキル【アイテム錬成】!」と唱えてみた。
すると集めた枝が光り始め、形を変え、木製のカップが2つ完成した。
「で、できたああああああああ!」
「す、すごいです……! これがスキルの力なんですね!?」
生み出された木のカップは仕上がりも滑らかで、高級感すら漂わせている。
恐らく、前世で見た市販の木製カップをイメージしたためだろう。
取っ手もついていて、とても使いやすそうだ。
「あとはこれに、水魔法で水を――」
僕は錬成した2つのカップを並べてそれぞれに左右の手のひらをかざし、力を集中させて冷たい水をイメージした。
手のひらから小さな水球が生まれ、そこからカップに水が注がれていく。
そしてここで、魔力量が増えた影響なのか、魔法を使う際の負担が以前より圧倒的に少ないことに気がついた。
――これは、思った以上に魔力量が底上げされているのでは?
「はいこれ、スイの分」
「ありがとうございますっ! いただきます!」
片方をスイに渡し、自分もカップに口をつける。
ゴクッゴクッゴクッゴクッ……。
ひんやりと冷たく清らかな水が、喉を通るたびに体内の熱を溶かしていく。
「――っぷはーっ! うまいっ! 生き返るううう!」
「本当、冷たくてとってもおいしいです。身体が内側から浄化されていくみたい」
「よかった。喉が渇いたら遠慮なく言ってね。魔力量、思った以上に増えてるみたい」
試しにステータス画面を確認すると、元々50しかなかった魔力量――MPが、なんと300になっていた。
「魔力量、300に増えてる。元々50くらいしかなかったはずなのに……」
「基準が分かりませんがだいぶ増えましたね!? すごいです!」
僕以外の人にはステータス画面が存在しないため、ブロンドール家のみんなの魔力がどれほどのものだったのかは分からないが、これは負けず劣らずくらいになったのでは!?
「どうりで魔法を使っても疲れないわけだ。――というわけだからスイ、遠慮は無用だよ。水分補給以外でも、困ったことがあったら言ってね」
「はい。ありがとうございますっ!」
本当は糖分や塩分、ミネラルも補給したほうがいいんだけど。
地下室に閉じ込められて突然飛ばされたから、今はなにも持っていない。
海からも遠そうだし、どこかに岩塩かなにかがあればいいんだけど。
僕とスイは、水分補給のあとしばらくのんびり休息を取り、適当なところで再び上を目指すことにした。
今が何時かは分からないが、うっすらと夕方の気配が近づいている気がする。
暗くなる前には、どこか寝られる場所を見つけられるといいな……。
「――にしても本当、もうちょっと足場がどうにかならないかなあ」
「手つかずの山奥ですからね……」
「――そうだ、道がないなら作ればいいんだ。ちょっと試してみよう!」
僕は足下へ手をかざし、歩きやすい山道をイメージしながら意識を集中させて、「スキル【アイテム錬成】!」と唱えてみた。
すると足下の土と木の根が強く光り、うねうねと姿を変えていく。
「――やった! 成功だ!」
「!? 道が……道ができています! スキルというのは本当にすごい力なんですね!」
僕とスイは、歩きやすくなった足下の変化に、手を取り合って喜んだ。
行く手を阻んでいた木の根や岩が取り払われて道ができただけでなく、高低差の激しい場所にはしっかりと木の階段まで造られている。
これなら怪我の心配もないし、安心して歩けるぞ!
スキルの効果は一定の範囲にしか及ばないようなので、僕とスイは、道を作りながら少しずつ進んでいった。
過酷な道を歩き続けたことで、自分の熱気で頭がぼーっとしてきた。
このままでは事故に繋(つな)がりかねない。
僕とスイは、比較的大きな木の根元に腰を下ろし、一息つくことにした。
道は悪いが空気は澄んでいて、深呼吸をするごとに身体が浄化されていく気がする。
風が吹くと、木々の隙間からこぼれる光が地面を彩り美しい。
――とはいえ、汗をかいて体力を消耗していることに変わりはなく。
「喉が渇いた……。なにがあるか分からないし、あまり魔力を消費したくないけど……でも水分補給は大事だよね。――そうだ、せっかくだしあれを試してみよう!」
「あれ、とは?」
「いいから見てて!」
僕はそこらへんに落ちていた木の枝を拾い集め、一か所にまとめる。
そして「スキル【アイテム錬成】!」と唱えてみた。
すると集めた枝が光り始め、形を変え、木製のカップが2つ完成した。
「で、できたああああああああ!」
「す、すごいです……! これがスキルの力なんですね!?」
生み出された木のカップは仕上がりも滑らかで、高級感すら漂わせている。
恐らく、前世で見た市販の木製カップをイメージしたためだろう。
取っ手もついていて、とても使いやすそうだ。
「あとはこれに、水魔法で水を――」
僕は錬成した2つのカップを並べてそれぞれに左右の手のひらをかざし、力を集中させて冷たい水をイメージした。
手のひらから小さな水球が生まれ、そこからカップに水が注がれていく。
そしてここで、魔力量が増えた影響なのか、魔法を使う際の負担が以前より圧倒的に少ないことに気がついた。
――これは、思った以上に魔力量が底上げされているのでは?
「はいこれ、スイの分」
「ありがとうございますっ! いただきます!」
片方をスイに渡し、自分もカップに口をつける。
ゴクッゴクッゴクッゴクッ……。
ひんやりと冷たく清らかな水が、喉を通るたびに体内の熱を溶かしていく。
「――っぷはーっ! うまいっ! 生き返るううう!」
「本当、冷たくてとってもおいしいです。身体が内側から浄化されていくみたい」
「よかった。喉が渇いたら遠慮なく言ってね。魔力量、思った以上に増えてるみたい」
試しにステータス画面を確認すると、元々50しかなかった魔力量――MPが、なんと300になっていた。
「魔力量、300に増えてる。元々50くらいしかなかったはずなのに……」
「基準が分かりませんがだいぶ増えましたね!? すごいです!」
僕以外の人にはステータス画面が存在しないため、ブロンドール家のみんなの魔力がどれほどのものだったのかは分からないが、これは負けず劣らずくらいになったのでは!?
「どうりで魔法を使っても疲れないわけだ。――というわけだからスイ、遠慮は無用だよ。水分補給以外でも、困ったことがあったら言ってね」
「はい。ありがとうございますっ!」
本当は糖分や塩分、ミネラルも補給したほうがいいんだけど。
地下室に閉じ込められて突然飛ばされたから、今はなにも持っていない。
海からも遠そうだし、どこかに岩塩かなにかがあればいいんだけど。
僕とスイは、水分補給のあとしばらくのんびり休息を取り、適当なところで再び上を目指すことにした。
今が何時かは分からないが、うっすらと夕方の気配が近づいている気がする。
暗くなる前には、どこか寝られる場所を見つけられるといいな……。
「――にしても本当、もうちょっと足場がどうにかならないかなあ」
「手つかずの山奥ですからね……」
「――そうだ、道がないなら作ればいいんだ。ちょっと試してみよう!」
僕は足下へ手をかざし、歩きやすい山道をイメージしながら意識を集中させて、「スキル【アイテム錬成】!」と唱えてみた。
すると足下の土と木の根が強く光り、うねうねと姿を変えていく。
「――やった! 成功だ!」
「!? 道が……道ができています! スキルというのは本当にすごい力なんですね!」
僕とスイは、歩きやすくなった足下の変化に、手を取り合って喜んだ。
行く手を阻んでいた木の根や岩が取り払われて道ができただけでなく、高低差の激しい場所にはしっかりと木の階段まで造られている。
これなら怪我の心配もないし、安心して歩けるぞ!
スキルの効果は一定の範囲にしか及ばないようなので、僕とスイは、道を作りながら少しずつ進んでいった。