イラストの少女は人形に瓜二つだった。
もちろん細部は異なる。背中の書架も、右手に握った剣も、この人形は持っていない。
それでも画面の外を真っ直ぐ見つめてくる青い瞳や、背中に広がる銀髪など、モデルとなっているのは間違いなかった。
ゲームのサイトは8年ほど前から運用されているもので、今も精力的にイベントを開催しているようだった。
キャラになりきり、チャット式で進行するRPG――私が知っている中だと、テーブルトークRPGと言われるジャンルに近い。
PBW(プレイバイウェブ)、と公式サイトの解説には書いてあった。
ウェブ産としては、ずいぶん歴史のある形式のゲームらしい。
なりきりチャットの発展形、と解釈した。
プレイヤーは一定のルールに基づいて、世界観に則り各ユーザが作成したキャラクターで、用意されたシナリオに参加する。
シナリオに参加したプレイヤー達はフォームなどで行動を宣言し、運営やシナリオマスター側がそれらの行動宣言をまとめた結果を文章にして発表する。
Meris1254のキャラクタ、『リア・ライアー』は2018年に作成されて以来、15個のシナリオに参加していた。
――機械文明での浄水器のパーツ探し。
――水の都でのコーヒー占い。
――カードの世界での警備任務。
このゲームだとリアは相当の古株のキャラだったらしい。持ち物欄は各シナリオで拾い集めた装備が並んでいた。
最後に参加したシナリオは2020年。この頃になると、Meris1254は自分でもシナリオを作っていたようだった。
「私は助けを求められたから、応じているだけです。だって私の手、溺れたときの藁よりはしっかりしてるでしょ?」
リアはシナリオでは斥候役をしていることが多かった。イベントをすべてメモに記す癖がある筆まめな少女。どんな小さな手がかりも見逃さず、シナリオマスターの意図を酌んで次の行動を起こすおしゃべりな偵察者――想定された「使われ方」はそんなところだろうか。
上手く出来ているキャラだな、と思った。
私も長編を執筆するときは、世界を設定したあと、こうしたキャラクタに試走させることがある。好奇心に溢れていて、喫茶店で頼んだコーヒーひとつから街の景気、社会構造、その他読者が気にするであろうことをちゃんと知ろうとするキャラだ。
きっとこのキャラも作者とは良好な関係を築いていたのだろう。
Meris1254の作成したシナリオでも、相変わらずリア・ライアーが語り手となっていた。
公式シナリオを改変した盗賊退治の短編、オリジナルの世界を渡り歩きながら事件の真相に近付いていく長編――。
最後のシナリオは、2021年の10月に投稿されていた。参加人数は12人で、セッションの期間は2ヶ月。バトルを中心とするシナリオだった。
『旅路の終わり』と題されたそのシナリオを読んだとき、背すじが寒くなったのを覚えている。
説明文には以下のように記されていた。
『作戦目標:リア・ライアーの殺害』
もちろん細部は異なる。背中の書架も、右手に握った剣も、この人形は持っていない。
それでも画面の外を真っ直ぐ見つめてくる青い瞳や、背中に広がる銀髪など、モデルとなっているのは間違いなかった。
ゲームのサイトは8年ほど前から運用されているもので、今も精力的にイベントを開催しているようだった。
キャラになりきり、チャット式で進行するRPG――私が知っている中だと、テーブルトークRPGと言われるジャンルに近い。
PBW(プレイバイウェブ)、と公式サイトの解説には書いてあった。
ウェブ産としては、ずいぶん歴史のある形式のゲームらしい。
なりきりチャットの発展形、と解釈した。
プレイヤーは一定のルールに基づいて、世界観に則り各ユーザが作成したキャラクターで、用意されたシナリオに参加する。
シナリオに参加したプレイヤー達はフォームなどで行動を宣言し、運営やシナリオマスター側がそれらの行動宣言をまとめた結果を文章にして発表する。
Meris1254のキャラクタ、『リア・ライアー』は2018年に作成されて以来、15個のシナリオに参加していた。
――機械文明での浄水器のパーツ探し。
――水の都でのコーヒー占い。
――カードの世界での警備任務。
このゲームだとリアは相当の古株のキャラだったらしい。持ち物欄は各シナリオで拾い集めた装備が並んでいた。
最後に参加したシナリオは2020年。この頃になると、Meris1254は自分でもシナリオを作っていたようだった。
「私は助けを求められたから、応じているだけです。だって私の手、溺れたときの藁よりはしっかりしてるでしょ?」
リアはシナリオでは斥候役をしていることが多かった。イベントをすべてメモに記す癖がある筆まめな少女。どんな小さな手がかりも見逃さず、シナリオマスターの意図を酌んで次の行動を起こすおしゃべりな偵察者――想定された「使われ方」はそんなところだろうか。
上手く出来ているキャラだな、と思った。
私も長編を執筆するときは、世界を設定したあと、こうしたキャラクタに試走させることがある。好奇心に溢れていて、喫茶店で頼んだコーヒーひとつから街の景気、社会構造、その他読者が気にするであろうことをちゃんと知ろうとするキャラだ。
きっとこのキャラも作者とは良好な関係を築いていたのだろう。
Meris1254の作成したシナリオでも、相変わらずリア・ライアーが語り手となっていた。
公式シナリオを改変した盗賊退治の短編、オリジナルの世界を渡り歩きながら事件の真相に近付いていく長編――。
最後のシナリオは、2021年の10月に投稿されていた。参加人数は12人で、セッションの期間は2ヶ月。バトルを中心とするシナリオだった。
『旅路の終わり』と題されたそのシナリオを読んだとき、背すじが寒くなったのを覚えている。
説明文には以下のように記されていた。
『作戦目標:リア・ライアーの殺害』

