私の親友を見つけるまで
























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 先日は失礼しました。
 パソコンの調子がおかしかったのか、変な日記を書いてしまったようです。週末にでも、しっかりと時間をとって修正したいと思います。


 さてさて。ひとまず先日でまとめておきたいことはひと通りまとめ終えることができた。
 まだ正直怖い部分はあるが、そうもばかり言っていられない。

 そもそも、世の中に小説がごまんとあるのに、そうした小説にまつわる神隠しのような話はほとんど聞いたことがない。それはつまり、あの怪異に喰われる人は限りなく少ないか、あるいはまだ私の知らない条件があるに違いない。
 そんなふうに考え、私も親友を見習って前向きにできることをひとつひとつやっていきたいと思う。

 そのためにもまず、私はモキュメンタリーホラー小説コンテストに出す小説をしっかりと完成させなければならない。

 ということで、私は時間をとって一本のモキュメンタリーホラー小説を書き上げることにした。

 次にある1ページ分の短編は、ホラー嫌いな私が書き上げた最初のモキュメンタリーホラー小説である。


 タイトルは、『アナタを見つけるまで』。


 本日記を読んでくださっている皆さま、どうか私の乾坤一擲の短編小説をご一読ください。
















 かつて、一部子どもたちの間で噂になっていた「隠れ鬼」の存在をご存知だろうか。

 子どもの頃によくやった遊び?
 いいや、違う。これは隠れ鬼ごっこ(・・・)のことではない。

 我々編集部がこの噂を知ったのは、小誌へ送られてきたとある手紙と写真がきっかけだった。
 まずは、その写真について見てもらいたい。







 そう。何の変哲もない風景写真だ。
 いや、そもそも風景を映したものというよりは、誤って撮ってしまった写真と言い表した方がいいかもしれない。画角も被写体もピントも何もかもがズレている。撮影者は、いったい何を写したかったのかわからない。

 最初は、違う写真を送ってしまったのかと編集部は思った。
 しかし、この写真に同封されていた手紙の冒頭を読んですぐ、そんな考えは吹き飛んでしまった。

 ――この写真は、2018年12月2日の午後5時22分。●●●●公園で撮られた写真です。

 先にお詫びしておくが、この公園の名前を今は出すことができない。
 理由は後述する。だが小誌の読者であれば、おそらく年月日からおおよその見当がついているのではないだろうか。
 
 この場所は、かの児童連続行方不明事件が起きた場所のひとつだ。
 しかも驚くべきことに、同封されていたこの写真は事件発生時刻に撮られた写真であるらしい。

 手紙を開封した我々は驚いた。すぐさまその先の文章にも目を通した。

 どうやら、この写真はかなり慌てて撮影されたものらしかった。
 撮影したのは、●●●●公園の近くに住む当時小学校四年生の男子児童、Yくん(10歳)。
 Yくんは、学校が終わったあとに友達五人とともにこの公園へ赴き、隠れ鬼ごっこをしていた。公園は石のオブジェや大きな街灯、東屋など遮蔽物が多く、隠れ鬼ごっこをするのに適した場所だった。隠れ鬼ごっこは白熱し、一時間以上に渡って続いていたらしい。

 そんな折、Yくんたちは最後に一度仕切り直そうと、全員で集まって再び鬼決めをしようとしていた。
 公園自体は遮蔽物が多いとは言え、そこまで広くない。大声を出せばみんなに聞こえるほどの大きさだ。
 ゆえに、もう一度鬼を決めると叫んだ時は、石の柱の陰や茂みの後ろ、塀の後ろなどからぞろぞろと隠れていた子どもたちが姿を現した。時刻は午後五時に差し掛かろうとしており、辺りは夕陽によってオレンジ色に染まっていた。

 ところが、何度呼んでも友達のひとり、Aくんが姿を現さなかった。

 Yくんをはじめ、子どもたちはみんな不思議に思っただろう。ゲームそのものをやり直すのだから、一度全員で探し始めてもおかしくない。
 しかし、そこへ負けず嫌いで悪戯好きなKくんが言ったそうだ。「このまま仕切り直した新しい隠れ鬼ごっこを始めて、Aくんを混乱させよう」と。隠れ鬼ごっこが白熱していたこともあり、Kくんの提案は受け入れられた。

 そうして始まった、仕切り直しの隠れ鬼ごっこ。その最中にAくんがひょっこり見つかり、訳もわからないまま鬼に捕まってしまう、というのがオチだったはずだ。
 ところが、さらに鬼が何度か変わるほど続けても、Aくんは一向に姿を見せなかった。いよいよ不思議に思ったみんなは、隠れ鬼ごっこを中断してAくんを探そうということになった。

 しかしここで、さらなる恐怖が子どもたちを襲った。
 なんと、先ほどまでいたKくんもいなくなってしまったのだ。

 町内の大人たちや警察まで出動し、AくんとKくんの捜索が行われたが、ついぞ二人は姿を見せることはなかったという。

 編集部はすぐさま緊急会議を開いた。
 手紙の内容は非常に具体的で、我々が独自に調べていた内容とも一致する部分が多々あった。

 当時、●●●●公園での行方不明事件も含めて似たような事件があちこちで相次いでいた。しかもその対象は全て小学生であり、警察は連続誘拐事件として捜査を進めていた。私たち編集部もその話題性の観点から取材を続けていた。
 しかし、結局6年経った今でも犯人の情報や目星について全く掴めていない。捜査も取材も滞り、話題性が冷めてきた最近では取り上げることも少なくなっていた。本格的に調査は打ち切り、別のものを始める案まで浮上してきていた。

 この手紙が届いたのは、そんな矢先のことだった。
 しかも手紙の送り主は、この一連の出来事の原因を「人ならざるもの」と見ているようだった。

 ――この事件は、「本物の隠れ鬼」の仕業だと思います。

 丁寧な筆致で、手紙にはそう書かれていた。

 本物の隠れ鬼。
 手紙の送り主によれば、それは独特な言葉を発しながら隠れている人を見つけて捕まえ、自身の世界に連れ去って隠れ鬼ごっこをさせる怪異らしい。
 そして、その隠れ鬼ごっこに負けて捕まった場合、連れ去られた人は喰われてしまうのだそうだ。

 編集部では、すぐにこの「本物の隠れ鬼」の噂について検索をかけた。なかなか引っ掛からなかったが、とあるオカルト系のまとめサイトでようやく手がかりを見つけた。
 そこには、下記のようなことが書いてあった。


○「本物の隠れ鬼」の噂についてのネット情報
・夕暮れ時に墓の見える場所で隠れ鬼ごっこをしていると、参加者とは別に「本物の隠れ鬼」が紛れ込む
・隠れている時に、「本物の隠れ鬼」に見つかり捕まると攫われる
・「本物の隠れ鬼」は前髪の長い子どもの姿をしており、朱色に染まったボロボロの服を着ている
・「本物の隠れ鬼」に攫われると、連れて行かれた先でもう一度隠れ鬼ごっこをやらされ、逃げ切った場合は元の場所に戻れるが、捕まった場合は喰われてしまう


 編集部は、過去の取材データを全て見返した。すると、驚くべきことが判明した。
 確かに、これまでの行方不明事件が起きていた場所はどこも、墓所や霊園にほど近い広場や公園であったのだ。
 協議の結果、編集部はひとまず手紙を送ってくれた人に話を聞くことにした。また、取材場所はその写真が撮られた●●●●公園でおこなった。


○手紙の送り主、Iさん(Yさんのご兄弟、20歳、県内在住)への取材内容 ※一部抜粋

編集部(以下、「編」):「いただいた写真と手紙を拝見しましたが、あの写真は具体的には何を写したものなのですか?」

Iさん(以下、「I」):「わかりません。あの写真は、Yが当時隠れていた場所から撮られたものです。なんでも、何かがいたような気がして慌てて撮影したと言っていました。その時は動物か何かだと思ったそうですが、あとで見返すと何も写ってなかったそうです」

編:「なるほど。もしかするとそれが『本物の隠れ鬼』かもしれない、ということですか?」

I:「そうです。つい最近Yからその話を聞いて、怪談話が好きだった私が『本物の隠れ鬼』の可能性に思い至り、お送りさせていただきました。編集部さんの方で、解析でもなんでもしていただけると」
(後日、専門家にも写真を見てもらい、画像解析もおこなったが、やはり何も写っていなかった。)

編:「他にも撮られた写真はないのですか?」

I:「写真はないですが、同じようなことを言っていた友達が何人かいたらしいです。その友達が隠れていた場所も聞いたので案内します」





↑友達Cさんが隠れていた、木々のある場所。
 木の陰に身を潜めていた時、同じように木の陰からこちらを眺めている視線を感じたらしい。その時は別の隠れ役の友達かと思っていたが、当時この付近に隠れていた友達はいなかった。





↑友達Nさんが隠れていた、ベンチや茂みのある場所。
 ベンチの陰に寝そべるように隠れていた時、すぐ近くに何かがいる気配を感じたらしい。Yさんと同じく、動物か何かだと思っていたとのこと。





↑友達Rさんが隠れていた、石垣のある場所。
 石垣の陰から鬼役の友達の様子をうかがっていた時、不意に後ろから近づいてくる音が聞こえてきたらしい。すぐに振り返ったが、誰もいなかった。



編:「案内ありがとうございます。その違和感を覚えた友達は無事だったんですよね?」

I:「そのように聞いています。違和感があったのはその時だけで、今は何事もなく普通の生活を送っていると」


 また、怪談話に詳しいというIさんに『本物の隠れ鬼』についてもうかがった。


編:「では次に、『本物の隠れ鬼』について教えてください。まず確認ですが、『本物の隠れ鬼』というのは、『隠れ鬼ごっこをしていて隠れている時に参加者に紛れ、隠れ役の子を連れ去る怪異』という認識で合っていますか?」

I:「そうです。私も亡くなった祖父から伝え聞いたのですが、この辺りでは昔から神隠しがあるようなのです。そしてそれは、決まってかくれんぼや隠れ鬼ごっこをしている時に起こっていたと」

編:「おや、ということは、『本物の隠れ鬼』はかくれんぼの時にも現れるのですか?」

I:「そうですね。元々は『隠れている人を攫う鬼』という意味で、その怪異のことを『隠れ鬼』と呼んでいたみたいですから」

編:「なるほど。ちなみに手紙には『本物の隠れ鬼は、独特の言葉を発して追いかけてくる』とありましたが、この『独特の言葉』というのはなんでしょうか?」

I:「えっと、二つありまして。対象を見つけた時に、『みーつけた。お逃げーなさい』と言うらしいです。そしてもうひとつは、対象を追いかける時に、『ほーらはやく。お逃げーなさい』と繰り返し唱えてくるとか」

編:「いかにもな怪談って感じですね」

I:「そうですね。これは私も聞いた時、祖父か誰かが後から付け足した尾ひれなんじゃないかなって思いました。だから手紙には具体的に書かなかったんですが。それに普通の隠れ鬼ごっこって、隠れ役の人を見つけても何も言わずに追いかけていくじゃないですか。だから結構、独特だなって思いました」


 以前、編集部でも特集で取り上げたことがあるが、ごっこ遊びには地域ごとのローカルルールがあることが多い。
 隠れ鬼ごっこについても、隠れ役を見つけた時に「みーつけた」とかくれんぼのように言葉を発する地域があった。●●●●公園のある本地域については裏付けが取れなかったが、そこから派生した話である可能性は高いと考えられる。
 そして、これはひとつの仮説ではあるのだが、もしかすると児童連続行方不明事件が起こった地域は、このローカルルールが存在している地域ではないだろうか。
 もしそうだとするならば、この「本物の隠れ鬼」による神隠しの可能性は飛躍的に上昇する。

 今後、編集部は児童連続行方不明事件が起こった地域を改めて訪れ、当時の状況を今一度洗い出していく予定だ。
 もし本事件の犯人が人間ではなく、正体不明の怪異である場合、我々はどのように対処していけばいいのか。
 しかも「本物の隠れ鬼」は、隠れ鬼ごっこに限らず、「隠れている人を攫う鬼」である可能性が高いのだ。ともすれば、我々とて全くの他人事ではないことになる。
 読者の皆様も、何かから隠れる場合はくれぐれも注意していただきたい。
 小誌では、数回にわたって「本物の隠れ鬼」についての調査結果の記事を掲載していく予定であり、そちらも参考にしていただければ幸いである。


 それでは最後に、本記事において●●●●公園と具体的な場所を伏せた理由について述べて終わりにしたい。


 我々が●●●●と伏せた理由は二つある。


 一つ目は、読者の皆様の興味を引かせるため。多くの人は、何かを意図的に隠されると無意識のうちにその正体を知りたくなるものだ。我々は皆様に、本文の場所まで読んでいただきたかった。


 二つ目は、文字化けを起こしてしまうため。


 ●●●●公園とは、荳画ョ頑」ョ譫公園である。


 おそらく、文字化けを起こしているのではないだろうか。


 ご心配には及ばない。この世界では、しっかりと読むことができるだろうから。


 本当に申し訳ない。しかし、この方法でしか対処する術はないらしいのだ。


 どうか、なるべく早くこの場所に来ていただきたい。


 検索手段は使える。
 そして、なるべく落ち着いて。深呼吸を何度もして。
 大丈夫だ。あいつは、目が見えないのだから。


 そしてどうか、どうか。


 あの怪異の身代わりとして魅入られたアナタが、最後まで無事であることを祈っている。

 この日記を読んでくださっているあなたは、身代わりから逃れられた「あなた」でしょうか。

 それとも、身代わりとなってヨミクイの世界に飛ばされた後、親友が練った作戦が功を奏して戻ってきてくれた「アナタ」でしょうか。

 あるいは、どちらでもない「アナタ」でしょうか。

 いずれにしろ、私は謝らなければなりません。
 大変申し訳ございませんでした。

 既にお察しのことと思いますが、先日私が投稿した短編小説『アナタを見つけるまで』は、ヨミクイの世界で私が執筆した身代わりのための書き物です。
 私は私が助かるために、親友との約束を果たすために、そしてあの世界にヨミクイを閉じ込めるために、どうしてもこの日記の読者の中から身代わりを立てる必要がありました。
 これから、順序立てて説明します。

 事の発端は、25日の月曜日に起こりました。
 私は、日記を書きながら親友のスマホをいじっていました。

 何か手がかりがないか。
 彼はどこにいるのか。
 本当にヨミクイに攫われてしまったのか。
 この文字化けの文言は、いったい誰に対して向けられたものなのか……。

 その時でした。
 窓に当たっていた雨の音が、ピタリと止んだのです。
 私は日記を書くのを止め、辺りを見渡しました。
 そこは、いつもの自室。なんら変化はありません。

 しかし、明らかに異質でした。

 音が、環境音が、まったくありませんでした。
 暖房器具の稼働音も、窓を揺らす風の音も、先ほどまで響いていた雨の音も、遠くで鳴っていた車の走行音も、なにもかも。
 そうした音が、一切聞こえませんでした。

 もっとも、私が発する音だけは別でした。
 声や、足音や、物に触れる音や、私の心臓の音。
 そうしたものは鮮明に、私の耳に届いていました。
 まるで、それこそが重要なのだと言わんばかりに。

 どこまでも不気味で、異様な空間に、私はどうしようもない恐怖駆られました。
 私はとるものもとりあえず、すぐさま外へ飛び出していました。

 けれど外も、異様としか呼べない光景が広がっていました。


 

 
 先日投稿したこちらの写真は、その時に助けを求めようと撮影したものです。
 夕暮れ時のようにオレンジ色に染まった雲に、黄昏時の後のように紫色に彩られた空。
 一方で遥か彼方は真夜中のように真っ暗で何も見えず、私のいる場所は薄暗く、後方に至ってはやや明るい道が続いていました。

 いや、明るいという表現は適切ではないかもしれません。


 


 見てお分かりのことと思います。
 そこもまた、異常な光景でした。

 ここは、本来なら銀杏の木々が並んでいる道です。
 ところが元々の黄色は微塵もなく真っ赤に染まり、色は潰れ、写真だけでなく実際の光景もピンボケしていました。

 まるで、作られた世界。
 モキュメンタリーのごとく、私は現実と非現実との境界がわからなくなっていきました。

 焦りと怖さがせり上がってくる感覚に、私は一目散に走り出していました。

 なるべく明るい方へ、明るい方へと走りました。

 聞こえるのは、私の息遣いと足音、そして高鳴る心臓の音ばかりです。
 他の音は、一切聞こえませんでした。

 私の心は、完全に恐怖に支配されていました。

 しかもそこで、私は何かにぶつかってしまいました。

 それは、この世界で初めて見た、人でした。

 ヨミクイ。

 人は本当に怖い時、声なんて出せないのだと知りました。

 けれど、違いました。

 頭を抱えて震える私に、その人は優しい声をかけてくれました。


「まさか、本当に来ちまうなんてな」


 今でもその人の声は、彼の声は、鮮明に耳の奥に残っています。

 私がぶつかったのは、私がずっと探していた親友でした。

 親友は、生きていました。

 今度は驚きのあまり声が出ない私に、親友は静かに笑みを浮かべました。
 それだけで、私の心はみるみる落ち着いていくのがわかりました。

 その後、私は親友からその世界のことを聞きました。
 その世界は、案の定「ヨミクイの世界」のようでした。
 親友はあらゆる術を駆使して、6年近くヨミクイから逃げていました。脱帽というほかありません。

 そしてどうやら、私は親友が昔に残したメモの文章を夢中になって読んでしまい、身代わりとしてこの世界に連れて来られたようでした。
 親友は確認のため、私にスマホを見せてきました。そう、あの私が直前まで見ていたはずのスマホです。




 
 私はまた驚きました。
 私が読んだ時は文字化けを起こしていた文章が、読めるようになっていました。
 しかし、一番上にある宛名だけは、相変わらず文字化けを起こしていました。

 そこで、私は現実世界で集めた情報を全て親友に話しました。
 頭の切れる親友は、これまで彼がこの世界でいろいろと試して集めた知識と合わせて、いくつかの結論に辿り着いたようでした。

 まず前提として、私が読んだのは間違いなくヨミクイの世界で親友が書き起こした文章でした。
 しかし、どうやら現実世界にいる人に向けて助けや逃走を求めるような文章を書いた場合は文字化けを起こすようです。(私が月曜日にヨミクイの世界で書いた助けを求める投稿も文字化けを起こしていましたが、まさにこれに由来するものです。)
 また、ヨミクイの世界にいる者の名前も文字化けを起こすみたいでした。(親友が書いたメモの宛名には私の名前が書いてあったようですが、写真でもわかる通り文字化けを起こしていました。)

 一方で、ヨミクイの世界で書いたそれ以外の文章は、そのまま現実世界にも反映されるようでした。その証拠に、私が現実世界で見つけたいくつかのヨミクイの世界に関する情報は、親友がヨミクイの世界でネット掲示板に書き込んだ内容でした。これに付随して、ヨミクイの世界でもネットを使った調べ物はできることも判明しました。
 ヨミクイの世界は、どこまでも現実の世界を踏襲していました。

 こうした推測から、親友はひとつの作戦を提案してきました。

 その作戦は、あまりにも親友らしく、そして寂しさと悲しさに満ちたものでした。


「俺の命は、もう長くない。これを利用して、俺はヨミクイをこの世界に閉じ込めたいと思う」


 彼はそう言いました。
 彼の言う作戦とは、これ以上ヨミクイの犠牲者を出さないために、ヨミクイを自身の世界に閉じ込めてしまうというものです。

 親友が着目したのは、ヨミクイの世界から生還した人がヨミクイの写真を撮っているという情報と、ヨミクイは目が見えず心音で標的を探すという情報でした。
 前者は、ヨミクイは現実世界で連れ去った人を喰らう以外に、ヨミクイから逃げ延びた者を現実世界に送り返す時にも当人の目の前に姿を現すのではないか、ということ。
 後者は、ヨミクイは標的の位置を特定する際に、標的の心音を頼りにしている、ということ。
 これらを組み合わせて考えた時、先ほどの作戦が浮上すると彼は言いました。

 それは、もしヨミクイの世界でヨミクイに喰われる以外の理由により標的の命が尽きた時、ヨミクイは標的の場所が分からず延々と探し回るのではないか、ということです。

 私は驚愕しました。
 必死に止めました。
 けれど彼は、自分の心臓は病気に蝕まれ、もう限界なのだと言いました。
 そしてどうせヨミクイに喰われて終わるのなら、最後に一矢報いたいのだとも言いました。

 親友は、ヨミクイのせいで小説に夢中になれない人がいることを嘆きました。
 親友は、世の中には素晴らしい小説がたくさんあるのだから、もっと多くの人が憂いなく夢中になってほしいのだと主張しました。
 親友は、ヨミクイが生まれた経緯を知ってヨミクイを哀れんでもいました。
 親友は、同じような悲劇が二度と起こってほしくないのだと強く望みました。

 それから親友は、私に生きて現実世界に戻り、これからも小説を書いていってほしいのだと言ってくれました。

 私は泣きました。
 泣いて泣いて、泣きました。
 私は苦悩と葛藤の末、親友の作戦を承諾しました。

 親友と一緒に、ヨミクイに見つからないよう注意しつつ、あの公園へと行きました。
 道中は、たくさんの思い出話や世間話をしました。

 公園に着くと、私たちは何枚か写真を撮りました。
 それから私は、一本の短編小説を書きました。

 前述した通り、その短編小説は私の身代わりを立てるためのものです。

 身代わりの対象は、私の日記の読者。

 親友から、なるべく生存率を高めるために、ヨミクイについて一番知っている人たちを身代わりにするよう言われたからです。

 そして短編小説のページ数は、最小の1ページ。
 身代わりとして逃げるべき日数を、とにかく少なくするためです。
 ちなみに小説以外の書き物で身代わりを立てた場合、元々の人が逃げるべき日数をそのまま引き継ぐことになるようで、1ページの短編小説が最適だという結論に至りました。(かくいうこの時の私の頭の中にも、親友の逃げるべき残日数と同様の1271日逃げなければいけないという強迫観念のようなものが渦巻いていました。)

 私は親友の隣で、短編小説を書き上げました。
 親友は私の小説を読んで、満足げに頷いてくれました。面白いと言ってくれました。
 それから、不覚にも身代わりに立てることになる私の日記の読者を必ず生きて返すと約束してくれました。6年近く生き延びた彼の言葉は、それでも迷いのあった私の心を安心させてくれました。

 そうして私は、短編小説『アナタを見つけるまで』を投稿しました。

 今私が現実世界に戻れているということは、すなわちどなたか2人が身代わりとしてヨミクイの世界に飛ばされたことを意味します。本当にごめんなさい。

 しかし私は、親友との約束を守るためにも、どうしても現実世界に戻る必要がありました。

 親友との約束。
 それは、この物語を世に広めることです。

 以前の日記にも書きましたが、かつてのヨミクイは娯楽小説が大好きだった商家の主人の感情に包まれて過ごしていました。主人が亡くなってからは、主人が大好きだった小説を拠り所として存在していました。元々は、人に害をなす怪異ではありませんでした。

 しかし、主人の家族の嫉妬による放火によりそれらの娯楽小説が全て燃えてしまい、怒りに猛たヨミクイは人に害をなす怪異となってしまいました。
 そしてヨミクイが、今も小説に夢中になる感情を追い求めるのは、かつて自分を包み込んでいた感情が失われたことによる寂しさがあるからではないでしょうか。

 既に存在しているヨミクイは、私の親友の手によって自身の世界に永遠に閉じ込められました。

 しかし、新たなヨミクイが生まれないとも限らないのです。

 この物語を広めることで、どうか新たなヨミクイが生まれないことを祈るばかりです。

 それから、もうひとつ。
 親友との最期の約束を果たさなければなりません。

 そのために、私はこの日記を応募することに決めたのです。


 スターツ出版主催の、モキュメンタリーホラー小説コンテストに――。


 果たして、この日記に書かれたものが、現実なのか物語なのか。


 全ては、あなたのご想像にお任せします。



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