今日は予定通り、加藤さんと智也さんに話をお聞きした。
内容については、正直一番懸念していたものとなってしまった。
先に私なりの結論を書いてもいいのだが、もう一度先入観を排して考えたい気持ちもあるので、私がその時々に感じたことを書いたメモをもとに、内容をまとめていこうと思う。
少々事情があって、いつも以上にうまくまとめられないかもしれないが、どうかご了承いただきたい。(理由については後述する。)
まず、今日行った調査の行程は以下の通りだ。
⚪︎第2回題材探し兼情報収集調査 行程
11:00 〜 11:30 …… 加藤さんに取材
11:30 〜 12:00 …… 移動
12:00 〜 13:30 …… 昼食、所用、移動
13:30 〜 17:00 …… 智也さんに取材
最初に取材をおこなった加藤さんとは、同じ大学ではあったものの、私はダンスサークルには入っていなかったので直接の交流はなかった。たまに親友と一緒にいるところを構内で見かけたくらいで、話したことはほとんどない。一応、SNSでは同じ大学のコミュニティで繋がっていたので、今回はそこから連絡をさせてもらった。
幸いにも、加藤さんは私のことを覚えてくれていた。また親友の行方不明事件についてもかなり気にかけてくれていたらしく、今回の取材調査を引き受けてくれることになったわけだ。
加藤さんは、親友がいなくなる3日前、すなわち2018年11月30日の金曜日の夜に、親友の家にサークルメンバーで集まって飲み会をしていたらしい。なんでも、直近で撮ったダンスの動画を見つつ、サークルの話や就職の話、果ては恋バナなんかに花を咲かせていたとか。
その時も、親友の様子は至っていつも通りだったみたいだ。いつも通りの量のお酒を飲み、いつも通りその場を盛り上げ、いつも通り恋に悩んでいる仲間をからかい、いつも通り真剣なアドバイスまでしていたらしい。そうして終電が近くなった頃に切り上げ、翌朝まで泊まることになった加藤さんを除いて帰ったそうだ。
加藤さんは他のサークルメンバーが帰ったあとも親友と話をしていた。それは本当に取り留めのないことばかりで、親友に悩み事があるような感じは全くしなかったらしい。
そして話題が親友の部屋に錚々と並ぶ小説や漫画の話になった時、親友は嬉々として言ったそうだ。
「俺さ、土日はこのシリーズものの小説を一気読みするつもりなんだよ。もう楽しみで楽しみで!」
それは、海外から輸入され最近翻訳版が出たファンタジー小説だったらしい。一冊が300ページ超えの8冊に渡る超大作で、それを土日丸々使って読破すると息巻いていたそうだ。しかもそのファンタジー小説には漫画版もあり、それらも含めて全てをこもって読むつもりらしかった。食料を買い込み、翌週の課題もほぼ終わらせたほどで、相当息巻いていたと言っていた。
すなわち、だ。
私の親友は、行方不明の原因となる「何か」があった土日は、家に引きこもっていたことになる。
そして、それだけ感情を全開にして楽しみにしていたならば、行方不明に直結するような重篤な悩みはなかった。少なくとも、親友が自分の意志で姿を消したという可能性は限りなく低い。順序立てて考えれば、そんなふうに推理できる。(捜査をした警察官も同じようなことを言っていたらしい。)
となるとやはり、親友は突発的に起きた「何か」に巻き込まれ、行方不明になってしまったということだ。
しかも、その「何か」を推理するための情報が、明らかに「ヨミクイ」の噂へと繋がっている。
土日すべてを使って読破することを目標にするくらい楽しみにしていたという、「熱狂的な感情」も。
読み終えた小説を傍に高々と積み上げ、余韻に浸っている間に起きたらしい、行方不明のきっかけも。
ただ、まだわからない。ここまでの情報だけでは、本当に親友がヨミクイの世界に連れ去られたかどうかはわからない。
そんなふうに、この時までの私は、思い込もうとしていた。
まだいろいろと加藤さんには訊きたいことはあったものの、そこで加藤さんのスマホに会社から電話がかかってきてしまった。なんでも彼(今さらですが、加藤さんは男性です。)は、県内でも有数の精密機械メーカーの営業をしているらしく、年末に向けての準備で忙しくしているところの合間を縫って来てくれたようだった。感謝しかない。
加藤さんは、私と同じく未だに親友の行方不明について気にかけていた。
私が今回のモキュメンタリーホラー小説コンテストでいろいろと試行錯誤しようとしていることを話すと、心から応援していると言ってくれた。
そして別れ際に「ヨミクイ」の噂について尋ねると、彼もいくつかの噂を聞いたことがあると教えてくれた。
その中でも特に気になったのは、
「ヨミクイの世界にいる者の名前は、文字化けする」
というものだった。
どこかで聞いたことがあった、文字化けという単語。
そうだ。先週、私はこの日記を読んでくださっている方から言われたのだ。
所々、文字化けしていると。
でも、おかしい。
私が見返す限りでは、どこも文字化けしていないのだ。
もしかすると、文字化けはヨミクイの世界にいる人との関係が疎い者にしか見えないのだろうか。
妄想にも近い推測は尽きなかったが、これ以上は時間が許してくれなかった。
今回の試みで進捗があれば必ず連絡すると約束して、私たちはわかれた。
その後、私は智也さんと落ち合い、先週ぶりに親友の実家へと向かった。
……ダメだ。
この先のことがかなり大事なのに、まだ頭の中が整理しきれていない。
少し早いが、今日の日記はここまでとしたい。
また明日、いや、少し時間がかかるかもしれないが、どうにか整理してから続きについてもまとめていきたいと思う。
私としても、予想外のことだったんだ。
それほどまでに明るく感情を表していた親友が、昴>縺、縺が、まさか。
大病を患っていたなんて。
内容については、正直一番懸念していたものとなってしまった。
先に私なりの結論を書いてもいいのだが、もう一度先入観を排して考えたい気持ちもあるので、私がその時々に感じたことを書いたメモをもとに、内容をまとめていこうと思う。
少々事情があって、いつも以上にうまくまとめられないかもしれないが、どうかご了承いただきたい。(理由については後述する。)
まず、今日行った調査の行程は以下の通りだ。
⚪︎第2回題材探し兼情報収集調査 行程
11:00 〜 11:30 …… 加藤さんに取材
11:30 〜 12:00 …… 移動
12:00 〜 13:30 …… 昼食、所用、移動
13:30 〜 17:00 …… 智也さんに取材
最初に取材をおこなった加藤さんとは、同じ大学ではあったものの、私はダンスサークルには入っていなかったので直接の交流はなかった。たまに親友と一緒にいるところを構内で見かけたくらいで、話したことはほとんどない。一応、SNSでは同じ大学のコミュニティで繋がっていたので、今回はそこから連絡をさせてもらった。
幸いにも、加藤さんは私のことを覚えてくれていた。また親友の行方不明事件についてもかなり気にかけてくれていたらしく、今回の取材調査を引き受けてくれることになったわけだ。
加藤さんは、親友がいなくなる3日前、すなわち2018年11月30日の金曜日の夜に、親友の家にサークルメンバーで集まって飲み会をしていたらしい。なんでも、直近で撮ったダンスの動画を見つつ、サークルの話や就職の話、果ては恋バナなんかに花を咲かせていたとか。
その時も、親友の様子は至っていつも通りだったみたいだ。いつも通りの量のお酒を飲み、いつも通りその場を盛り上げ、いつも通り恋に悩んでいる仲間をからかい、いつも通り真剣なアドバイスまでしていたらしい。そうして終電が近くなった頃に切り上げ、翌朝まで泊まることになった加藤さんを除いて帰ったそうだ。
加藤さんは他のサークルメンバーが帰ったあとも親友と話をしていた。それは本当に取り留めのないことばかりで、親友に悩み事があるような感じは全くしなかったらしい。
そして話題が親友の部屋に錚々と並ぶ小説や漫画の話になった時、親友は嬉々として言ったそうだ。
「俺さ、土日はこのシリーズものの小説を一気読みするつもりなんだよ。もう楽しみで楽しみで!」
それは、海外から輸入され最近翻訳版が出たファンタジー小説だったらしい。一冊が300ページ超えの8冊に渡る超大作で、それを土日丸々使って読破すると息巻いていたそうだ。しかもそのファンタジー小説には漫画版もあり、それらも含めて全てをこもって読むつもりらしかった。食料を買い込み、翌週の課題もほぼ終わらせたほどで、相当息巻いていたと言っていた。
すなわち、だ。
私の親友は、行方不明の原因となる「何か」があった土日は、家に引きこもっていたことになる。
そして、それだけ感情を全開にして楽しみにしていたならば、行方不明に直結するような重篤な悩みはなかった。少なくとも、親友が自分の意志で姿を消したという可能性は限りなく低い。順序立てて考えれば、そんなふうに推理できる。(捜査をした警察官も同じようなことを言っていたらしい。)
となるとやはり、親友は突発的に起きた「何か」に巻き込まれ、行方不明になってしまったということだ。
しかも、その「何か」を推理するための情報が、明らかに「ヨミクイ」の噂へと繋がっている。
土日すべてを使って読破することを目標にするくらい楽しみにしていたという、「熱狂的な感情」も。
読み終えた小説を傍に高々と積み上げ、余韻に浸っている間に起きたらしい、行方不明のきっかけも。
ただ、まだわからない。ここまでの情報だけでは、本当に親友がヨミクイの世界に連れ去られたかどうかはわからない。
そんなふうに、この時までの私は、思い込もうとしていた。
まだいろいろと加藤さんには訊きたいことはあったものの、そこで加藤さんのスマホに会社から電話がかかってきてしまった。なんでも彼(今さらですが、加藤さんは男性です。)は、県内でも有数の精密機械メーカーの営業をしているらしく、年末に向けての準備で忙しくしているところの合間を縫って来てくれたようだった。感謝しかない。
加藤さんは、私と同じく未だに親友の行方不明について気にかけていた。
私が今回のモキュメンタリーホラー小説コンテストでいろいろと試行錯誤しようとしていることを話すと、心から応援していると言ってくれた。
そして別れ際に「ヨミクイ」の噂について尋ねると、彼もいくつかの噂を聞いたことがあると教えてくれた。
その中でも特に気になったのは、
「ヨミクイの世界にいる者の名前は、文字化けする」
というものだった。
どこかで聞いたことがあった、文字化けという単語。
そうだ。先週、私はこの日記を読んでくださっている方から言われたのだ。
所々、文字化けしていると。
でも、おかしい。
私が見返す限りでは、どこも文字化けしていないのだ。
もしかすると、文字化けはヨミクイの世界にいる人との関係が疎い者にしか見えないのだろうか。
妄想にも近い推測は尽きなかったが、これ以上は時間が許してくれなかった。
今回の試みで進捗があれば必ず連絡すると約束して、私たちはわかれた。
その後、私は智也さんと落ち合い、先週ぶりに親友の実家へと向かった。
……ダメだ。
この先のことがかなり大事なのに、まだ頭の中が整理しきれていない。
少し早いが、今日の日記はここまでとしたい。
また明日、いや、少し時間がかかるかもしれないが、どうにか整理してから続きについてもまとめていきたいと思う。
私としても、予想外のことだったんだ。
それほどまでに明るく感情を表していた親友が、昴>縺、縺が、まさか。
大病を患っていたなんて。