中学と違って高校で私の後遺症について知っているのは担任の先生と彩美だけで、及川くんももちろん知らない。


だから後遺症のことは、及川くんだけには絶対に知られたくない。



「…あのさ、花村にお願いがあるんだけど」


「ん?なに?」


「…俺の彼女になってくんない?偽物のでいいから」



及川くんは真面目な顔で座ったまま私を見上げてくると「ちょっとそこのコンビニまで付き合って」みたいなノリでそう言ってきた。



「…はい?」


「急だし何言ってんだって思われるのはわかってるけど、頼めるのも花村くらいしかいなくて。冬だし周りのやつらも最近カップルが増えてきただろ?なぜかわかんねぇけど、俺にも告白してくるやつが増えてて困ってんだよ。さっきも知らない女からLINE来てさ。そういうのいちいち断んのもめんどくせぇし、いっそのこと彼女でも作れば落ち着くかなって思って」



及川くんの整った顔とクールさから、女子からの人気を集めていることは私も知っていた。



「でも、なんで私…?話し始めたのも昨日が初めてだよね?」