「あ、電車来た」



及川くんと他愛もない会話をしているとあっという間に電車が来て、帰宅ラッシュだからかパンパンに人が詰まっている電車に私たち二人も乗り込む。



「混んでるね…」



人二人分空けて座っていた距離が一気に縮まり、今はすぐ目の前に立っている及川くんに動揺がさとられないようにそっと話しかける。


及川くんは小さく頷いただけで、私も電車内だしこれ以上話すと迷惑だろうと考え口を閉ざす。



「…っ」



電車が発車してから二分とかそれくらいしか経っていないだろう。


なんだかさっきからおしりに誰かの手がちょいちょい当たっている気がする。


電車が揺れるたびにとんっと軽く当たっていた手が、だんだんと私のおしりを撫でるように変わってきた。



ちらりと及川くんの後ろにある窓を見ると、私の後ろにぴったりとくっついている三十代半ばくらいのサラリーマンと目が合った。