「上見てよ、この綺麗な星空の下で出会えた私達は、一生の宝じゃない?今日の今この場でしか経験できないことだよ」
上を見上げると、確かに空にはたくさんの星と、綺麗な三日月が輝いていた。
「そうか、今日は三日月か」
「三日月に恋愛のお願いごとすると叶うって噂があるの知ってた?いまここで、私たちのお願いごとしてみようよ」
「僕はまだいいとは言ってないです」
「いいからいいから、目瞑って手合わせて」
そう言われ、言われるがままに従った。
死にたい気持ちなんて、彼女と話してるうちに忘れてしまっていた僕の心に気づいた後の願い事は、“彼女が幸せになれますように”だった。
「お願いしたよ」
目を開けてそう言うと、彼女はまだ真剣に祈っていた。
そんな彼女を見ると、綺麗にカールしたまつ毛は、女の子らしさを感じて、少しときめいた。
不覚にも、好意を少し抱いてしまっている僕の気持ちはなんなのか。
三日月を見て、これが恋の願い事が叶うというのはこういう事なのかと、考えた。
「ごめん、おわった?」
横で彼女が僕の顔をのぞき込むと、驚いて少し距離をとろうとすると、ふらついていたせいが、砂浜に足を取られ倒れそうになる。
「うわっっ」
「えっ」
彼女が僕の腕を掴み助けようとするが、僕は砂浜に倒れ、僕に乗っかるように彼女は覆い被さった。
「っ…いたたたっ…」
彼女と目が合って、僕たちは笑った。
「ふふっ、なにやってんだろうねわたしたち」
彼女とグッと距離が近くなったような気がして、緊張が緩んだ。
「ほんとだな」
彼女は怖いほど軽かった。
病気のせいなんだろうかと感じ取った。
僕たちは体制を直して、隣同士に座った。
そっと横目でリストバンドを見ると名前が書いてあった。
前田莉乃 、彼女の名前だろう。
夜空を見上げて、僕たちは喋った。
「神様はさ、見てるんだよ、君が死のうとしてることも、私が死にたくないって思ってることも、鉢合わせたのは神様なんだよ」
「そんなことあるかな」
「あったじゃん、現実で、起きてるじゃん、ここに私たちはいるそれだけで証明されてるよ、私たちを見つけてくれた神様に感謝しなきゃだね」
潮風が体にまとわりついて、少しベタベタとしていても、不思議と嫌じゃなかった。
「たしかにな。僕は出会えてよかったって今思えるよ」



