電車で意識がもうろうとする。
「ん……あー、ここどこだ」
『次は、青山病院前、青山病院前です。……』
「青山病院前か。……降りなきゃだ」
「ICカードですか?切符ですか?」
急に車掌が話しかけてきて、目障りだな。
なんか言ってるけど、何言ってるのかわかんないな。
薬を飲んでいる僕は、人の言葉があんまり頭に入ってこなかった。
あ、そうだ、切符どこやったっけ。
財布?違う。
ズボンのポケット、違う。
Tシャツのポケットの中だ。
そう思い取り出すと、車掌が近づいてきた。
「あ、切符貰います」
あー、回収されるのか。
ゆっくり海岸のある方向に向かって歩いていく。
たしかこっちに海あったような。
なんか妙に口が乾くな。
飲み物が沢山並んだ光る箱のスイッチを押しても、飲み物は出てこなかった。
そうだ、お金入れなきゃ。
手が震えながらお金を入れようとするも、500円玉は落ちて箱のくらい隙間に消えていった。
「なんでそんなとこ入っていくんだよ、おーい、出てこい」
暗闇を覗いて見ても、出てくる気配は無い。
「仕方ないな……1000円入れるか……」
札を食べた箱は、全部のボタンが青く光った。
「みず、みず……みず……」
そうしているうちに食べられたはずの札は、入れたところの下の場所から出てきた。
選んでいる時間が長かった。
先に水のボタンを見つけてからもう一度1000円を入れる。
今度こそ、青く光るボタンを押した。
プラスチックの扉を上にあげて、水を取り出す。
「冷てぇ……」
キンキンに冷えた水は、手のひらを冷やした。
ただでさえ、薬を飲んで手の感覚がないのに。
白いプラスチックのペットボトルの蓋を開けようにも開かず、Tシャツの裾をペットボトルに被せて左手を反時計回りに回す。
「あ、あいた。やっと飲める」
ごく……ごくごく……ごく……ごくごく……
「んはぁっ……水ってうまいな」
なんにも染っていない綺麗な水を飲めることは幸せなことなのかもしれないな。
僕はこんなにも社会に揉まれて汚れているのに。
自販機にもたれかかっていたら、少し意識が途切れた。
「ん、……あ……ねてた。ここどこだ……」
周りを見渡しても、暗闇にひとつの自販機しかない。
照らされた光は青白く、目に突き刺してくる。
何回目の居場所確認なんだろう。
何度薬で記憶をなくしたことか。
「あー、たしか海に行くんだっけ、海……海……」
持っていた水に不信感を覚えながらも、自分が買ったものだと忘れた水を飲み干し、傍にあった丸い穴の空いた箱の中に同じようなプラスチックが入っていたのでそこに入れた。
体を起こしてしばらく歩いて海岸に着いた。
「歩きにくいな」
砂浜に足を取られながらもふらふらと海の方向へ進んでいく。
すると、目の前には先客がいたようで、白いワンピースのような服を着た髪の長い女性がしゃがみこんでいた。
どうやら彼女は歌を口ずさみながら、砂浜に落ちている石や流木を拾っては海にポチョンと投げていた。
こちらに気付いたのか、彼女は後ろを振り返った。
「あ、こんばんは」
自然と挨拶をされて、こちらも慌てて「こんばんは」と返す。
特に喋ることもないのだが、僕は海に来て何がしたかったのか。
それは、ただ死にたかっただけだった。
海の中にフラフラの状態で入れば溺れると思った。
でもそれは、誰もいないのが前提のはなしで、助けを呼ばれちゃおしまいだ。
こんな田舎にすぐに来てくれる人なんているのかと疑問にも思うが、彼女がいるからには、死ぬことなんて不可能だろうと考えた。
第1発見者にさせるのも悪い気がしてくるし、何より彼女の方が貧弱そうに見える。
彼女の石を投げている手首を見ると、病院でつけるリストバンドがしてあった。
この人もしかして、夜中に抜け出してきたんじゃないかと、驚いた。
「青山病院から抜け出してきたんですか」
僕は咄嗟に聞いてしまった。
「…なんで、バレたんですか」
彼女は驚いた表情をしていた。
「腕のリストバンド、病院のですよね」
「あぁ…これね。そう、病院で付けられたやつ。気にしないで、気晴らしに来てるだけだから」
「そう、ですか…」
「ん……あー、ここどこだ」
『次は、青山病院前、青山病院前です。……』
「青山病院前か。……降りなきゃだ」
「ICカードですか?切符ですか?」
急に車掌が話しかけてきて、目障りだな。
なんか言ってるけど、何言ってるのかわかんないな。
薬を飲んでいる僕は、人の言葉があんまり頭に入ってこなかった。
あ、そうだ、切符どこやったっけ。
財布?違う。
ズボンのポケット、違う。
Tシャツのポケットの中だ。
そう思い取り出すと、車掌が近づいてきた。
「あ、切符貰います」
あー、回収されるのか。
ゆっくり海岸のある方向に向かって歩いていく。
たしかこっちに海あったような。
なんか妙に口が乾くな。
飲み物が沢山並んだ光る箱のスイッチを押しても、飲み物は出てこなかった。
そうだ、お金入れなきゃ。
手が震えながらお金を入れようとするも、500円玉は落ちて箱のくらい隙間に消えていった。
「なんでそんなとこ入っていくんだよ、おーい、出てこい」
暗闇を覗いて見ても、出てくる気配は無い。
「仕方ないな……1000円入れるか……」
札を食べた箱は、全部のボタンが青く光った。
「みず、みず……みず……」
そうしているうちに食べられたはずの札は、入れたところの下の場所から出てきた。
選んでいる時間が長かった。
先に水のボタンを見つけてからもう一度1000円を入れる。
今度こそ、青く光るボタンを押した。
プラスチックの扉を上にあげて、水を取り出す。
「冷てぇ……」
キンキンに冷えた水は、手のひらを冷やした。
ただでさえ、薬を飲んで手の感覚がないのに。
白いプラスチックのペットボトルの蓋を開けようにも開かず、Tシャツの裾をペットボトルに被せて左手を反時計回りに回す。
「あ、あいた。やっと飲める」
ごく……ごくごく……ごく……ごくごく……
「んはぁっ……水ってうまいな」
なんにも染っていない綺麗な水を飲めることは幸せなことなのかもしれないな。
僕はこんなにも社会に揉まれて汚れているのに。
自販機にもたれかかっていたら、少し意識が途切れた。
「ん、……あ……ねてた。ここどこだ……」
周りを見渡しても、暗闇にひとつの自販機しかない。
照らされた光は青白く、目に突き刺してくる。
何回目の居場所確認なんだろう。
何度薬で記憶をなくしたことか。
「あー、たしか海に行くんだっけ、海……海……」
持っていた水に不信感を覚えながらも、自分が買ったものだと忘れた水を飲み干し、傍にあった丸い穴の空いた箱の中に同じようなプラスチックが入っていたのでそこに入れた。
体を起こしてしばらく歩いて海岸に着いた。
「歩きにくいな」
砂浜に足を取られながらもふらふらと海の方向へ進んでいく。
すると、目の前には先客がいたようで、白いワンピースのような服を着た髪の長い女性がしゃがみこんでいた。
どうやら彼女は歌を口ずさみながら、砂浜に落ちている石や流木を拾っては海にポチョンと投げていた。
こちらに気付いたのか、彼女は後ろを振り返った。
「あ、こんばんは」
自然と挨拶をされて、こちらも慌てて「こんばんは」と返す。
特に喋ることもないのだが、僕は海に来て何がしたかったのか。
それは、ただ死にたかっただけだった。
海の中にフラフラの状態で入れば溺れると思った。
でもそれは、誰もいないのが前提のはなしで、助けを呼ばれちゃおしまいだ。
こんな田舎にすぐに来てくれる人なんているのかと疑問にも思うが、彼女がいるからには、死ぬことなんて不可能だろうと考えた。
第1発見者にさせるのも悪い気がしてくるし、何より彼女の方が貧弱そうに見える。
彼女の石を投げている手首を見ると、病院でつけるリストバンドがしてあった。
この人もしかして、夜中に抜け出してきたんじゃないかと、驚いた。
「青山病院から抜け出してきたんですか」
僕は咄嗟に聞いてしまった。
「…なんで、バレたんですか」
彼女は驚いた表情をしていた。
「腕のリストバンド、病院のですよね」
「あぁ…これね。そう、病院で付けられたやつ。気にしないで、気晴らしに来てるだけだから」
「そう、ですか…」



