下書き星空の下で、君の願い事を。

そっと彼女を後ろから抱きしめた。

「なに、どうしたの」

戸惑う彼女は、少し耳を赤く染めていた。

でもすぐに、僕の反応を見て後ろを振り返ろうとする。

「栄佑くん、もしかして泣いてる?」

「泣いてない」

莉乃にはすぐにバレてしまう。

「泣き虫だね、そんなに悲しまないで」

この悲しみを雨が流してくれないかと強く願う。

「今を楽しもうよ、……ねぇ、キスしよっか。恋人みたいなことしたことないでしょ私たち」

「いまそんなこと言われても」

「今だからだよ、私のこと考えて泣いてるんでしょ」

そう言って僕の手を振りほどくと、彼女は向き合うように振り向いた。

見つめ合う距離は三十センチほどで、彼女は僕の涙を手で拭った。

彼女は目の前で目を瞑るので僕もそうすると、唇に柔らかく温かいものが触れ、彼女は僕の頬に両手を添えた。

僕は涙を流し、この瞬間を胸に刻んだ。

目を開けると彼女は泣きながら微笑んでいた。

複雑な感情でいることは間違いないが、うれしそうだった。

初めて見る彼女の涙に戸惑いながらも、僕はそのまま抱きしめた。

6月16日 月曜日 雨
彼女と初めてキスをした。
莉乃も僕も泣いていた。
お互いが存在を確かめるようなキスだった。
じめじめと湿気が体にまとわりついた。
抱きしめた彼女の体は震えていた。
やはり怖いのだと思う、死ぬことが。



時の流れには逆らえない
君との日々も 終わりがある
悲しみが胸を刺す
零れ落ちるしずくを手で拭った
逃げ出したい この恐怖から
終らせたくない 君との日々を
歌えなくなる 結末に 
聞き返す歌声に 残す思い出は
流れるだけの巻けないオルゴール

タイトルは[私は巻けないオルゴール]