彼女は退院した。
先週の梅雨入りから、空は律儀に雨を降らせている。
雨の中外に遊びに行くこともできず、僕の家で大人しくしている彼女。
じめじめとした湿気に不快な気持ち悪さを覚える。
彼女は八月の花火を誘ってきたが、体は大丈夫なんだろうか。
「なぁ、体は平気なの?」
「今のところ平気、私の病気急に悪化するんだって、怖いよね」
「悪化したらどうなるの」
「歌えなくなっちゃうね」
笑いながら言う彼女の気持ちの裏には、どんな感情が隠されているのだろう。
歌い手としての命も、削られていく。
それは、自分がイラストを描けなくなると言われたら、想像もつかないくらい怖いことだ。
死んだほうがマシって思うけど、その命すらも莉乃は消えてしまうんだ。
どうすることもできない。
何も言えなかった。
怖い、莉乃の命が助かる方法はないのか。
余命半年が短すぎて、もっと早く出会っていればと後悔しても何の意味もなさない。



