下書き星空の下で、君の願い事を。

六月に入った。

彼女は入院することになった。
検査のため仕方のないことだ。

これは毎月のことで、その間、出かけることは難しい。

それでも、彼女は夜中抜け出すのはお決まりコースみたいだ。

僕は面会時間に合わせて帰るけど、電話がかかってくるんだ。

「ねぇ、迎えに来てよ」

「そんな王子みたいなことできないよ」

「けち。入院するたびに思うんだ。あー、また一カ月経過したのかぁって。いつも思ってた、なんにもしてないのにって。でもね、栄佑くんと出会ってからはこんなに充実した日を過ごせて幸せだって思えるようになったんだ」

彼女は幸せだと言った。
僕は彼女と過ごすことで幸せにしてあげられるらしい。
少しでも楽しめるように何かしてあげたいと思うが、何も浮かばない。

こうして電話をしている時も、彼女は抜け出していて波の音が聞こえる。

彼女は歌を歌っていて、僕はそれを黙って聞く。

明るい莉乃だが歌うときはいつも落ち着いた歌い方をする。

「私、歌手になりたかったんだ。だから歌ばかり歌ってたんだけどね、わたし……」

何かを言いかけたまま彼女はゴホゴホと咳こんでしまった。

「大丈夫か莉乃」

僕は気が気じゃなかった。

どうにかなってしまいそうで。

「大丈夫大丈夫、ちょっと気管に入っただけ、またかけるね」

そう言って、電話を切られてしまった。
しばらくしても電話がかかってこず、ひたすら心配した。

6月5日 木曜日 曇りのち雨
天気予報では明日梅雨入りをするそうだ。
莉乃は今月最後になるかもだからと夜中抜け出していた。
莉乃が話してる途中でせき込んでしまい、電話もそのまま切られてしまった。
もう終電はなく、朝イチで病院に行こうと決めた。
本当は会えるなら今すぐにでも、莉乃に会いたい。