「まって、莉乃」
僕は彼女を追いかけ、隣に並んで一緒にエレベーターを待つことにした。
少し待つと、エレベーターの扉が開いた。
僕と莉乃、二人が乗り込むと、看護師を乗せないように、左手で虫を追い払うかのように手を動かし、右手で閉まるボタンを連打していた。
二人きりのエレベーター、彼女は不機嫌そうな顔でこう言った。
「私の親はね、仕事ばかりで私のことなんてどうでもいいの、だから何も言われないことになれてるの。何か言ってくれるだけましな気がする、あ、さっきの話ね。まぁ、ないものねだりだね」
「でも、余命半年ってわかったとき医者にどうにかならないか聞いてたんだろ。心配してるからだろ」
「わかってるよ、でも寂しいの。だって余命半年ってわかってから二人とも仕事人間になっちゃったから」
病院代とか、そういうことなのかな。
「なんて声をかけていいか…」
「そんな腫物みたいに扱わなくてもいいよ、私も栄佑くんも今過ごしてるこの時間は同じ時間を過ごしてるの。だから、二人とも一日の価値は同じ、二人でいるときに交通事故にあって二人とも天に昇ったとしたら、わかりやすいでしょ。同じ価値なの今この時間もね」
そういって、また不機嫌そうな表情をしていた彼女は、普通の女の子だった。
「ごめん、思うことこれからは言うわ」
反省した。
今過ごしてる時間は、二人とも同じ価値か。
時間を大切にしてるからこそ、説得力があるな。
「今まで自分を大切にしてこなかったから、1日の価値なんて考えたこと無かったんでしょ」
「なかったというか、むしろ、その1日に嫌気がさしていたというか」
「そうだろうね。でもさ、これからは私の体でもあるからね、栄佑くんは私の彼氏なんだから」
「わ、わかった」
これで、過剰摂取とか軽々しく出来なくなってしまった。
でも今は、莉乃が幸せに過ごせる日々のことだけを考えたい。



