「いらっしゃい、花嫁さん」
歌うように響く声に振り向くと、ふたつになった分かれ道の右側に灯籠を持った男が立っている。
燃えるような赤い髪に、意志の強そうな黒の瞳。金の派手な模様の入った赤地の着物。そんな男が無人だと思っていた島の洞窟の奥から出てきたことももちろんだが、陽葉を驚かせたのはもっと別のこと。
整った顔立ちをした男の額には、二本のツノが生えているのだ。
陽葉の知識の限りではあるが、おそらく、人の子にはツノはない。
ならば、この男は何者なのか……。
だが、互いに顔を見合わせて驚いていたのは陽葉だけではなかった。
大きく目を見開いた赤髪の男が、灯籠をぼとっと落とす。その次の瞬間。
「天音!」
赤髪の男が陽葉に飛びついてきた。
「やっと戻って来れたのか。みんな、天音に会いたくて待ってたんだぞ。黄怜のやつ、どうして花嫁が天音だと教えなかったんだ。驚かそうと思って黙ってたのか。それにしても、ほんとうにひさしぶりだな」
訳のわからないことばかり言いながら、男が陽葉をぎゅーっと抱きしめてくる。
元恋人の喜一とも手を繋ぎあったことしかない陽葉は、男からの激しい抱擁にひどく慌てた。
「は、離してください……!」
陽葉が派手な赤の着物の胸元をグッと向こうへ押すと、赤髪の男がクツリと笑う。
歌うように響く声に振り向くと、ふたつになった分かれ道の右側に灯籠を持った男が立っている。
燃えるような赤い髪に、意志の強そうな黒の瞳。金の派手な模様の入った赤地の着物。そんな男が無人だと思っていた島の洞窟の奥から出てきたことももちろんだが、陽葉を驚かせたのはもっと別のこと。
整った顔立ちをした男の額には、二本のツノが生えているのだ。
陽葉の知識の限りではあるが、おそらく、人の子にはツノはない。
ならば、この男は何者なのか……。
だが、互いに顔を見合わせて驚いていたのは陽葉だけではなかった。
大きく目を見開いた赤髪の男が、灯籠をぼとっと落とす。その次の瞬間。
「天音!」
赤髪の男が陽葉に飛びついてきた。
「やっと戻って来れたのか。みんな、天音に会いたくて待ってたんだぞ。黄怜のやつ、どうして花嫁が天音だと教えなかったんだ。驚かそうと思って黙ってたのか。それにしても、ほんとうにひさしぶりだな」
訳のわからないことばかり言いながら、男が陽葉をぎゅーっと抱きしめてくる。
元恋人の喜一とも手を繋ぎあったことしかない陽葉は、男からの激しい抱擁にひどく慌てた。
「は、離してください……!」
陽葉が派手な赤の着物の胸元をグッと向こうへ押すと、赤髪の男がクツリと笑う。



