(この島は、ただの無人島ではないのかも)
そう思い始めたとき、突然、陽葉の進む道が広く開けた。
五〜六人はゆうに入れそうなくらいの円形の空間。向かって一番奥に、石祠が肩を寄せるように並んで四体。それらから離れて、もう一体。
石祠の中にはそれぞれ、色の違う球体の石が置かれていた。
白、蒼、紅、黄――、離れて黒。
それぞれの石からは、魂を引き寄せられるような不思議な力を感じる。
なぜだかわからないが、ひとつだけ離れて置かれた石祠の黒の石に、陽葉の心は強く惹かれた。
鈍い光を放つ、黒の石。それに手を伸ばそうとしたとき。
「触れるな」
洞窟内に、ゴゴーッと地鳴りのような低い声が響いた。
驚いて立ち上がった陽葉が振り向くと、そこに菫色の着流しの銀髪の男が立っていた。
目が合うと、男の金の双眸がぎろりと睨み付けてくる。
この瞳をどこかで見たことがあるかもしれない。妙な既視感が、陽葉の胸を震わせた。
「立ち去れ。ここに人の子が入ることは赦さない」
だが、深く考える間も与えられないうちに、陽葉の身体は地響きにも似た恐ろしい声に吹き飛ばされた。
気付けば陽葉は洞窟の分かれ道の前にいて、不思議なことに三方向に分かれていたはずの道がふたつになっている。
今見たものは幻だったのだろうか。それにしては、睨みつけてきた男の残像が瞼の裏にはっきりと残りすぎている。
三つ目の別れ道があったはずの岩壁にそっと手を置いたとき、ふいに、あたりがパッと明るくなった。
そう思い始めたとき、突然、陽葉の進む道が広く開けた。
五〜六人はゆうに入れそうなくらいの円形の空間。向かって一番奥に、石祠が肩を寄せるように並んで四体。それらから離れて、もう一体。
石祠の中にはそれぞれ、色の違う球体の石が置かれていた。
白、蒼、紅、黄――、離れて黒。
それぞれの石からは、魂を引き寄せられるような不思議な力を感じる。
なぜだかわからないが、ひとつだけ離れて置かれた石祠の黒の石に、陽葉の心は強く惹かれた。
鈍い光を放つ、黒の石。それに手を伸ばそうとしたとき。
「触れるな」
洞窟内に、ゴゴーッと地鳴りのような低い声が響いた。
驚いて立ち上がった陽葉が振り向くと、そこに菫色の着流しの銀髪の男が立っていた。
目が合うと、男の金の双眸がぎろりと睨み付けてくる。
この瞳をどこかで見たことがあるかもしれない。妙な既視感が、陽葉の胸を震わせた。
「立ち去れ。ここに人の子が入ることは赦さない」
だが、深く考える間も与えられないうちに、陽葉の身体は地響きにも似た恐ろしい声に吹き飛ばされた。
気付けば陽葉は洞窟の分かれ道の前にいて、不思議なことに三方向に分かれていたはずの道がふたつになっている。
今見たものは幻だったのだろうか。それにしては、睨みつけてきた男の残像が瞼の裏にはっきりと残りすぎている。
三つ目の別れ道があったはずの岩壁にそっと手を置いたとき、ふいに、あたりがパッと明るくなった。



