瞼を覆う手の冷たさに、時間差で届いた白玖斗のやわらかな声音に、陽葉の心臓がドクドクと鳴る。
選択肢など初めからあってないようなものだ。
もし人里に帰りたいと望んだとしても、おそらく陽葉は龍神島を出られない。
一目見た瞬間から、陽葉の心はずっと美しい白の龍神に囚われているのだから。そのことを、白玖斗はもうとっくに見抜いている。
「白玖斗さん、私はあなたのそばにいたい」
そうつぶやいた瞬間、陽葉の視界が晴れる。
「ああ、永遠に共にいればいい」
金の瞳をたゆませて、白玖斗がニヤリと不敵に微笑む。そうして陽葉の左手をとると、手首にそっと口付けた。
白玖斗の唇が離れるのと同時に陽葉の手首に咲いたのは、天女花。
こうして陽葉は、白玖斗の正式な花嫁となったのだった。
これ以降、海の村の娘に天女花の痣が浮かぶことはなく――。
新しい花嫁が龍神島に送られることもなかったという。
Fin.
選択肢など初めからあってないようなものだ。
もし人里に帰りたいと望んだとしても、おそらく陽葉は龍神島を出られない。
一目見た瞬間から、陽葉の心はずっと美しい白の龍神に囚われているのだから。そのことを、白玖斗はもうとっくに見抜いている。
「白玖斗さん、私はあなたのそばにいたい」
そうつぶやいた瞬間、陽葉の視界が晴れる。
「ああ、永遠に共にいればいい」
金の瞳をたゆませて、白玖斗がニヤリと不敵に微笑む。そうして陽葉の左手をとると、手首にそっと口付けた。
白玖斗の唇が離れるのと同時に陽葉の手首に咲いたのは、天女花。
こうして陽葉は、白玖斗の正式な花嫁となったのだった。
これ以降、海の村の娘に天女花の痣が浮かぶことはなく――。
新しい花嫁が龍神島に送られることもなかったという。
Fin.



