「戻ってきたのだな」
「はい。予定外でではありますが……」
暗い場所で蹲る陽葉の瞼の裏には、白玖斗が陽葉の姿をした天音と話す姿が映像のように映っている。
陽葉には、外の様子が俯瞰的に見渡せた。
「予定外とは?」
眉をひそめる白玖斗を、天音が凛とした表情で見つめ返す。
「黎斗が目覚めました」
強いまなざし、迷いのない声。陽葉ではないその女を、白玖斗が眩しげに見つめる。
「それで、おまえは? また俺に力を貸してくれるのか?」
「もちろん、お力を貸しましょう」
甘やかな声でそう言うと、天音は自らの唇に歯をたてた。そこに、唇よりも濃い紅が滲む。
天音は白玖斗の首に腕を回すと、ゆっくりと彼に口付けた。
触れているのは陽葉ではないのに、なぜか唇にあたたかい心地よさを感じる。トクン、トクンと陽葉の一部が白玖斗に流れ込んでひとつになるような気がする。
天音が噛んだ傷をそっと舐めると、白玖斗がコクンと小さく喉を鳴らした。
「ずいぶんと衰弱されていましたね」
「人間の花嫁から得られる力には限りがあるからな。早く天音に会えないかと待っていた」
「私もです……」
せつなく響く天音の声に、陽葉の胸がズキズキ痛む。
抱きしめ合う白玖斗と天音を俯瞰で見つめながら、陽葉は気が付いていた。
(私の身体は天音の生まれ変わり……)
白玖斗が天音とふたたび巡り合った今、陽葉は要らない……。
「白玖斗様、どうか今世では……」
天音が何か語っていたが、陽葉は耳を塞いで遮断した。
(私はこのまま眠るから、どうか白玖斗さんは愛する人と幸せに……)
だが、陽葉が完全に意識を閉じようとしたとき、強い力で外へと引っ張られた。
ハッとして目を開けると、陽葉は白玖斗の腕に抱かれていた。さっきまで天音に身体を奪われていたのに、どういうわけかもとの陽葉に戻ったらしい。
陽葉があわてて飛び退くと、白玖斗が小さくため息を吐いた。
「はい。予定外でではありますが……」
暗い場所で蹲る陽葉の瞼の裏には、白玖斗が陽葉の姿をした天音と話す姿が映像のように映っている。
陽葉には、外の様子が俯瞰的に見渡せた。
「予定外とは?」
眉をひそめる白玖斗を、天音が凛とした表情で見つめ返す。
「黎斗が目覚めました」
強いまなざし、迷いのない声。陽葉ではないその女を、白玖斗が眩しげに見つめる。
「それで、おまえは? また俺に力を貸してくれるのか?」
「もちろん、お力を貸しましょう」
甘やかな声でそう言うと、天音は自らの唇に歯をたてた。そこに、唇よりも濃い紅が滲む。
天音は白玖斗の首に腕を回すと、ゆっくりと彼に口付けた。
触れているのは陽葉ではないのに、なぜか唇にあたたかい心地よさを感じる。トクン、トクンと陽葉の一部が白玖斗に流れ込んでひとつになるような気がする。
天音が噛んだ傷をそっと舐めると、白玖斗がコクンと小さく喉を鳴らした。
「ずいぶんと衰弱されていましたね」
「人間の花嫁から得られる力には限りがあるからな。早く天音に会えないかと待っていた」
「私もです……」
せつなく響く天音の声に、陽葉の胸がズキズキ痛む。
抱きしめ合う白玖斗と天音を俯瞰で見つめながら、陽葉は気が付いていた。
(私の身体は天音の生まれ変わり……)
白玖斗が天音とふたたび巡り合った今、陽葉は要らない……。
「白玖斗様、どうか今世では……」
天音が何か語っていたが、陽葉は耳を塞いで遮断した。
(私はこのまま眠るから、どうか白玖斗さんは愛する人と幸せに……)
だが、陽葉が完全に意識を閉じようとしたとき、強い力で外へと引っ張られた。
ハッとして目を開けると、陽葉は白玖斗の腕に抱かれていた。さっきまで天音に身体を奪われていたのに、どういうわけかもとの陽葉に戻ったらしい。
陽葉があわてて飛び退くと、白玖斗が小さくため息を吐いた。



