五頭龍と呼ばれるとおり、かつての龍神島には五人の龍神がいたらしい。
五人目の龍神の名は黎斗。白玖斗と対で生まれた黒の龍で、五頭龍の中で一番強い力を持っていた。軽く息を吐くだけで嵐を呼ぶことができ、天候や海を自在に操る。黎斗はその力で、人や海を脅かしていた。
黎斗を形作るものは闇。
五頭龍が行ったとされる悪の所業のほとんどは、黎斗に寄るもので。彼は人々が恐怖に怯える姿を見ることに喜びを感じていた。
自分の気の済むまで際限なく暴れる黎斗を抑えていたのが白玖斗だったが、黎斗の力はどんどん強くなるばかり。
次第に、龍神島の五頭龍は異形の悪神だと人間たちから恐れられるようになった。
人間から何を言われても気にはならなかったが、白玖斗は必要以上に海を荒らす黎斗を問題視していた。
そこへ、強い霊力を持った天音が現れた。
白玖斗は蒼樹、紅牙、黄怜と共に天音と手を結び、北の祠に黎斗を閉じ込めて封印した。
その後、白玖斗と天音は互いを想い合うようになり、天音は白玖斗の花嫁となった。
黎斗の力を封じてからは、島も海も人里の生活も平和で穏やかだった。
だが、閉じ込められた北の祠で、黎斗は密かに力を蓄えていた。封印をとき、島や人里を荒海の中に沈めるために復讐のときを静かに待っていた。
そして数百年前、ついに北の祠の封印が解かれて嵐が巻き起こった。
すぐに白玖斗が海を鎮めようとしたが、何百年と蓄え続けた黎斗の力はかつてよりも強くなっていた。
蒼樹たち五頭龍や天音と力を合わせても黎斗の力を抑えることができない。
このままでは世界が海に呑まれてしまう。そう思った天音は、自らが犠牲になって黎斗を封じることにした。
黒の石の中に、自らの心の一部と一緒に黎斗を閉じ込めた。そうしたのは、黎斗がひそかに自分に心を寄せていたことに気付いていたからだ。
天音は黒の石を、白玖斗、蒼樹、紅牙、黄怜の力を込めた四つの石で守らせて、洞窟の奥へと封じさせた。
『いつかかならず戻ります』
そんな約束の言葉を残して。
それが、白玖斗に愛されて消えた天音の記憶。
五人目の龍神の名は黎斗。白玖斗と対で生まれた黒の龍で、五頭龍の中で一番強い力を持っていた。軽く息を吐くだけで嵐を呼ぶことができ、天候や海を自在に操る。黎斗はその力で、人や海を脅かしていた。
黎斗を形作るものは闇。
五頭龍が行ったとされる悪の所業のほとんどは、黎斗に寄るもので。彼は人々が恐怖に怯える姿を見ることに喜びを感じていた。
自分の気の済むまで際限なく暴れる黎斗を抑えていたのが白玖斗だったが、黎斗の力はどんどん強くなるばかり。
次第に、龍神島の五頭龍は異形の悪神だと人間たちから恐れられるようになった。
人間から何を言われても気にはならなかったが、白玖斗は必要以上に海を荒らす黎斗を問題視していた。
そこへ、強い霊力を持った天音が現れた。
白玖斗は蒼樹、紅牙、黄怜と共に天音と手を結び、北の祠に黎斗を閉じ込めて封印した。
その後、白玖斗と天音は互いを想い合うようになり、天音は白玖斗の花嫁となった。
黎斗の力を封じてからは、島も海も人里の生活も平和で穏やかだった。
だが、閉じ込められた北の祠で、黎斗は密かに力を蓄えていた。封印をとき、島や人里を荒海の中に沈めるために復讐のときを静かに待っていた。
そして数百年前、ついに北の祠の封印が解かれて嵐が巻き起こった。
すぐに白玖斗が海を鎮めようとしたが、何百年と蓄え続けた黎斗の力はかつてよりも強くなっていた。
蒼樹たち五頭龍や天音と力を合わせても黎斗の力を抑えることができない。
このままでは世界が海に呑まれてしまう。そう思った天音は、自らが犠牲になって黎斗を封じることにした。
黒の石の中に、自らの心の一部と一緒に黎斗を閉じ込めた。そうしたのは、黎斗がひそかに自分に心を寄せていたことに気付いていたからだ。
天音は黒の石を、白玖斗、蒼樹、紅牙、黄怜の力を込めた四つの石で守らせて、洞窟の奥へと封じさせた。
『いつかかならず戻ります』
そんな約束の言葉を残して。
それが、白玖斗に愛されて消えた天音の記憶。



