西の邸宅を出ると、遠くを歩く銀髪の後ろ姿が見えた。

 さっきまで中の庭で紅牙や黄怜と話していたのに、気付けばいなくなっていたのだ。

 着流しの背中がゆらりと消えた先を見つめる陽葉の胸が、きゅっとわけもなくせつなくなる。

 黄怜は、次の朔の夜に陽葉を人の村に帰るべきだと思っている。陽葉も、その方がいいと思う。

 絢子ほどの美貌も、霊力もない無能な自分にが島に留まるの資格がない。

 けれど、白玖斗見るとなぜかどうしようもなく心を惹かれる。次の朔の日がいつまでも来なければいいのにと思ってしまうのだ。