未完成な君と、夢の終わりで恋を描く

なんでもない秋の日の昼過ぎ、厳かな空気で満ちた会場で絵のコンクールの入賞作品が飾られている。

数ある作品の中で一つの絵が異色を放っていた。

派手さがあるわけでも、斬新な構図や技法というわけでもなかった。ただ人を惹きつける何かがある。

私はそう感じたのだが他の人はそうでないのか、その絵を横目に見ながら素通りするだけで、足を止めてじっくりと鑑賞するような人はほぼいなかった。

『秋桜』というタイトルの上には薄暗い色を基調に、朧月からもれだす光に照らされた少女が両手で一輪の花の蕾を持っている。

私にはこれがなんの花なのか分からないが、タイトルから察するにおそらくコスモスだろう。

あまり存在感のないコスモスがタイトルにされていること、少女の顔が今までに見た事のない形容しがたい表情をしていたこと、あらゆることに興味が湧いた。

編集者である私は是非とも作者の記事を書きたいと思い、どうにか取材の場を設けることができた。当日、待ち合わせ場所のカフェに来たのは人当たりのよい男子高校生と思わしき人物だった。

今日の取材が楽しみで目を輝かせている私は、彼から見て変な大人であることはまず間違いなかっただろう。

それから軽く挨拶をすませて各々が頼んだ飲み物が運ばれてきた頃に、メモをとる準備をして取材を始めた。

興味の湧いたことや彼自身のこと、絵の少女のこと、いろいろなことを聞いた。彼は喜々として語ってくれた。飲み物の氷が溶けてなくなるまで取材は続いた。

そして、気づけば私はメモをとる手をやめていた。