透き通る声が耳元に聞こえる。

「・・・」

声が出なかった。

だって、久しぶりに誰かに名前で呼ばれた。

「茉乃、きみは、俺に会ったと思っているけど」

水川くんは、一瞬ためらうけど、また口を開く。

「俺たち、過去に一回だけ会ってるよ」

えっ。

息が止まりそうだった。

一度会った人のことは、忘れない主義だ。

でも、たまに記憶があいまいな時がある。

彼は,砂浜に座る。

こっち、というように、水川くんは、自分の横を手でトントンとする。

私は、おずおずと水川くんの横の席に座る。

「・・・あのさ、名前で呼んで」

横から、ボソッと聞こえた。

「あっ、嫌だったら別にいいよ」

彼は、すぐにこっちを向いて、笑顔で笑う。

「洸・・・くん」