読んでいると、目から涙が止まらなかった。

綺麗に残しておきたかった手紙に涙がこぼれ落ちていく。

そのせいで、水桜が書いた字がにじんでいく。

「待ってろよ」

俺は、水桜の部屋の窓の外に広がる空に向かって言う。

たぶん、彼女は、空の上で自分の好きな桜と、俺を見てる。

俺は、水桜のお母さんにお礼をし、すぐに行かなきゃいけない場所に向かう。

そこは、あの約束をした桜の木の下だ。

「幸せに生きて、精一杯に生きて、天国に土産話をいっぱい持っててやる」

俺は、水桜が好きな桜の木の下で、空に向かって笑顔で叫ぶ。

風で、桜の花びらが俺の髪の毛に乗っかる。

でも、風のせいで桜の花びらが飛んでいく。

それは、まるで水桜が俺の頭にある桜の花びらを取ったような気がした。

『またね、久咲』

風に乗って、そんな声が聞こえてした。

俺は、すぐに桜を見て、笑顔を向けた。