やはり、狼になった旦那様と鉢合わせた時と、囲まれたところを襲われずに済んだ、あの偶然の奇跡は、偶然ではなく旦那様の意思の結果だったんだ。
「愛する人を目の前にした時、感情が揺らいだ。それに不思議なんだが、今日は人間に戻った時、辛くなかったんだ。体は多少怠かったが胸が熱くて、早く帰らねばと足が動いた」
今こうやって旦那様を見ていても、この姿から狼になったのは、嘘だったんじゃないかと疑うほど。
傷はあるし息も荒いし、そういう面では疑わしいけれど、頭にあった手が私の手に下りてきた時、少し触れただけで解けてしまうような、脆いものを触るような繊細な手つきだった。



