何か気が紛れることをしようと、囲炉裏の前で途中で止めていた編み物をしていると、玄関の扉が大きな音を立てて開いた。
…帰ってきた!
この間と同じく、肩で呼吸をしている旦那様。
ちゃんと狼じゃない。ちゃんと人間の姿で、旦那様自身の瞳で私を捕えてくれている。
「おかえりなさいませ…」
「あぁ。遅くなった」
「いえ。ゆっくり帰ってきていただいて、大丈夫ですよ?」
やっぱり顔の傷が増えている。
仲間の狼とも、喧嘩するものなのか。
「道中、お怪我は大丈夫でしたか?顔の傷、お風呂から上がられたら、薬を塗りますから」
「ありがとう。柚葉…」
私の名前を呼ぶ旦那様。
胸が温かくなった。