「旦那様。一つお聞きしてもよろしいですか?」
「あぁ、何だ」
「その傷…、どうされたんでしょうか」
何かに引っ掻かれたような傷と、擦り傷が大きく付いている左頬を、自分の頬で示す。
すると、聞かれたくないとでも言うような、迷惑そうな表情を見せる。
「これは…。何でもない。外で昔走り回っていた時に、転けてできた傷だ」
「…だいぶ酷く転けられたんですね」
「石がゴロゴロとあるから。それに引っかかったんだ」
「そうでしたか。大変でしたね」
絶対違うと分かる。旦那様は嘘をついている。
簡単に、人には言えない秘密でもあるんだろうか。
平然を装って、何もないように振る舞っているけど、いつか話してくださる日が来ることを願います。