人間から狼になる瞬間を目撃してしまった。


疑いがあって見ていても、頭のどこかでは狼人間だなんて思いたくない自分が居て、旦那様としての優しさが無くなった獣を前にして、ショックを隠せない。




その場から動けず、草むらに座り込んだままでいると、旅に出ようとする狼に変わってしまった旦那様と目が合った。



佃荘司としての意思が残っておらず、私に牙を向けている。





「旦那様…。荘司、さん」





まだ名前を呼べば、旦那様の体の意識を人間に向けられるかもしれない。

それで運良く戻れば、連れて帰って治療しよう。