何でそんなに優しいの。何でそんなに強く居られるの。
旦那様も、辛い経験をしてきたからこそ、強く居られるのですか?
「すみません。こんな見窄(みすぼ)らしい姿…」
旦那様は声には出さず、握ってくれている私の手にさらに力を込めて、少しだけその手が旦那様の方へ引かれた。
これは、胸を貸してくださるということなのか。
恐る恐る頭を預けてみると、抵抗されなかった。このまま優しさに甘えてみようかな。
呼吸に合わせて上下する胸板は安心に包まれて、悲しさや辛さがゆっくりと消えて行くのが分かる。
目を閉じると、穏やかに脈打つ心臓の音が私の耳に溶け込んで、また一つ二つと涙が零れた。