夢の苺学園

 一時間目が始まるチャイムが鳴った後、空音が先生に質問した。

「先生ー!一校時目って何やるんですか~?」
 
 さっきまでの眠気が漂っていた空音も走ったからか、目が覚めたらしくていつも通りの空音になっていた。
 空音はね、朝が眠すぎると、今日みたいにめっちゃだらけるからな〜。まさか今日がその日だとは。
 
「これからの授業に使う教材とかは始業式が終わってから渡すらしいから、まず自己紹介しようか!」
 
 ポニーテールを揺らしながら、明るく笑顔で答えた先生は続けて話をした。
 
「はい!初めは私からいくね~!よし!」
 
 先生は手を叩いて、自己紹介をし始めた。
 
「私の名前は星 梨里愛(ほし りりあ)です!よろしくね!好きなものはりんごで、年齢は詳しくは言えないけど20代前半だよ!教師一年目でこのクラスのみんなと同じ一年生なんだ!私の性格は明るくていつも元気で優しいところかな。」
「誕生日は10月18日だから覚えといてね!私、記憶力高いから、みんなに誕生日に好きなものとか渡すね!だからちゃんと好きなもの教えといてね〜!ま、色々不安だけど、これからも仲良く、楽しく!頑張ろう!」
 
 自己紹介を終えた先生――梨里愛先生はニッコリ笑顔でみんなに手を振っている。その笑顔がとても素敵で可愛かった。
 
「ねね!せっかくだからさ!愛称決めようよ!」

 しーちゃんが前のめりになりながら、手を大きく上げて話した。
 
「お!いーね!愛称、何にするの?」
「んー、うちネーミングセンス無いからゆきみんが決めて!」
「え!?私!?」
「うん!」
 
 急に差されてびっくりした私は頭を悩ませる。
 
「うーん、梨里愛先生だから……『りり先生』とか?『りりぃ先生』でもいいかも!」
「お!いいね!じゃあみんなは今日から私のことは『りり先生』とか『りりぃ先生』って呼ぶように!間違えても『りんご先生』とかは呼ぶなよー(笑)」
 
 ニッコリ笑顔を浮かべた『りりぃ先生』は、最後にイタズラっぽく私達に注意した。
 
「よし!今度はみんなの番だよ!誰から発表する?」
 
 みんなが誰から行くか少し相談していたら、
 
「じゃあ僕から発表するよ!」
 
 と、みんなの様子を見た空音は、爽やかな声で言ったあと、席を立ち、みんなの前に出た。

「僕の名前は水野空音って言います!好きなものは唐揚げとチャーハンで、サッカーが大好きです。だから部活もサッカー入ろうと思ってます!僕の性格は基本、穏やか......かな?これから楽しく学校過ごそうね!よろしく!」

 終始爽やかな笑顔だった彼は拍手に包まれながら席へと向かってった。
 その後、しーちゃん、夏凛、私たちに遅刻未遂(ほぼ遅刻、ってかもう遅刻なんだけど)のことを教えてくれた、李音の順で自己紹介をし、ついに私の番が来た。
 ちなみに、なんで私が一番最後に発表するのかというと……。


「空音の発表、すごい爽やかでかっこよかった!!それじゃあ次さ、どうする~?」
「空音が最初に行ってくれたし、今度は私が行こうかな……」
 
 と、席を立とうとしたらしーちゃんに「ちょいちょい」と声をかけられて、思わずその場で止まる。
 
「ん?」
「え、ゆきみん行くの?」
 
 あ、もしかして、しーちゃん先行きたかったのかな?
 
「あ、しーちゃん先行く?いいよ~」
「そうじゃなくて、ゆきみんは最後でしょ……」
 
 と、少し最後の方で笑いを堪えながら言われた。
 私はポカーンとする。どういうことだろう……。
 すると、話を理解したらしい空音がいきなり吹き出した。

「確かに、雪見は最後の方が良いかも笑」

 空音にも同じことを言われて余計にポカーンとする。
 言い出しっぺのしおんちゃんは夏凛に何かを耳打ちしていて、夏凛が口角をあげていた。
 ……しおんちゃん、夏凛に何を耳打ちしたんだろう……。

「あー、それは最後の方がいいわ笑」

 夏凛もそのかっこよすぎる見た目に似合わないくらいの可愛い顔で笑っていた。


 ということがあって、最後になったのだ。
 結局、しーちゃんに夏凛に何を耳打ちしたのか聞いたが、はぐらかされてしまい、しょんぼりしていたら、空音に「後で分かるよ」と小声で囁かれた。
 はぁ……。一体、何を噂していたんだろう。気になりすぎて夜しか眠れないよ。 
 少しぼんやりとしょうもないことを考えていたが、すぐに自分の番になってしまった。
 まぁ、別にいいか!みんな笑顔なんだし!と思い、前を向き席を立ってみんなの前へ移動する。
 深呼吸を一度してから私は発表を始めた。

「私の名前は、緒方雪見です。みんな1年間よろしく!えぇっと、好きなものは苺と犬が好きです!それで、おにぎりの具材は鮭が一番好きです!!」
「ええっと、年齢は誕生日がまだ来てないから15歳だよ!ちなみに誕生日は9月2日だよ!私はとても明るくて元気なのが取り柄です!」

 発表中、ちらほらクスクスと小さく笑っている人がいた。
 まぁ、ほとんどしおんちゃんなんだけど。あと空音とか空音とか空音とか。
 夏凛と李音とりりぃ先生だけだよ?ちゃんと私の自己紹介を聞いてくれるのは。でも、心なしかちょっと夏凛も笑ってる気がするんだけど!?
 まぁいいや!うん!

「よしっ!みんな!」

 みんなに勢い良く話しかけると、空音がまだ少し笑いながらもしーちゃんと夏凛に静かにするように言ってくれた。
 ――めちゃくちゃありがとう!やっぱ空音は優しんだなぁ、笑ってるけど。 
 でも、よしっ!みんなこっち見てくれたね!!

「1年間、めっちゃ楽しく過ごそうね!改めて……」

 とびっきりの笑顔でこう言ったんだ。

「よろしくお願いしま ー" しゅ "っ !!」

 不思議と場が凍った。
 あれ?私の予想だと、みんなからの拍手を受けて、気持ち良く終わるはずなんだけど……。

 「え?」
 「……え?」
 「え?えぇぇぇぇー!!!!!」

 大事な最後の最後で、とびっきりのミスをしてしまったのだった。
 



「あははははっ!!」

 学校の帰り道、私の真似をしながらお腹を抱えて笑い出したしーちゃんは夏凛の肩に寄りかかって歩くほど笑っていた。

「いやー、やっぱゆきみんって最強だよね!!」
「ちょっと、しーちゃんさすがに笑いすぎだよぉ、恥ずかしいのにぃ......」
「だってさぁ?ゆきみんってほんと......っw」

 また豪快に笑った後、「でも!!」と三人の前に走り出して両腕を目一杯に広げ、

「みんな一緒のクラスでほんとに良かった〜!!」

 って満面の笑みで答えてて。
 なんか、大切な人がこんな笑顔なら、恥ずかしいけど許せちゃう。自分の大切な人にはいつまでも笑っててほしいし!
 しーちゃんの方に駆け寄って、手を握った。笑顔で。

「ほんとにね!改めてだけどさ!みんな!これからもよろしくね!」
「うん!たくさん思い出作っていこうね!」
「もちろん!」

 私としーちゃんはアイコンタクトをして、バスケクラブで二人だけの合言葉にしてた言葉を思いっきり叫んだ。

「たっくさん楽しんで、青春するぞ〜!!!」
「おぉ〜!!!!」

 ほんとにこれから、どんな毎日が待っているんだろう。
 でも、どんなことが待ってたとしても、自分らしく、自分の大切な人たちとずっと笑い合って、支え合って生きていきたいな!!