xxには、友人がいなかった。
常に暗く、人を信じることができなかった。
そんな、闇の化身のようなxxを変えたのは、一人の少女だった。
少女はまるで聖なる後光のように、xxを照らし出し、表世界へと連れ出した。
xxにとって、少女は救世主(ヒーロー)だった。

xxが生まれたとき、xxはたくさんの仲間達に囲まれていた。
皆がxxの誕生を喜び、叫び、舞い、踊り明かしていた。
その次の記憶は二歳のとき。
ある日頼まれた用をするついでに散歩をしていると、意味もわからぬまま突然蹴り上げられたのだ。
口から漏れ出た己の血。
その鮮明な赤色がxxの最後の色だった。
xxは視覚を失った。

それから、xxは外に出ることが不可能になった。
身体的な理由もあるが、一番の理由は精神的苦痛(トラウマ)によるものだった。
突然何をされるかわからない、そんな恐怖がxxを家へと引き止めた。

xxの視界は消え失せ、色という概念を失った世界にぽつんと浮かんでいるような状況だった。
仲間たちの声や自然の発する音が異常に大きく聞こえ、xxの脳を揺さぶった。
しかしそれに頼らなければ生きていけなかった。
自分しかいない世界から抜け出すための蜘蛛の糸は、真っ暗なジャングルに繋がっていた。

そんなxxはある日、一人の少女に出会った。
少女はxxを見つけると、顔を輝かして
「XXXX!!」
と言った。
xxは”XXXX!!”の意味はわからなかったが、少女がxxを好意的に感じていることを悟った。

xxは初めて人との関わりを望んだ。

そのために、xxは勇気を振り絞り、少女の声だけを頼りにし、信じ、外の世界への一歩を踏み出した。
雨に当たらず、日にも当たらず、涼しく、温かい寝床。
食べ物、他にも諸々何一つ不自由ない暖かな巣をあとにして、xxは少女の元へと向かった。

xxを見つけたとき、少女は近くにいた別の人間のもとに駆け寄り、何かを熱心に伝えていた。
例に漏れず、xxは少女が何を話しているかはわからなかった。

だから待った。

少しでも利口に見えるよう鳴かずに、背筋をしっかり伸ばして。
少女と別の人間の方を視ていた。
xxの目は見えなくとも、視ることはできたのだ。

何分待ったのだろうか。
少女と別の人間との会話は白熱していた。

そして、遂に、少女はxxの元へと駆け寄ってきた。
少女はxxを抱きしめると、嬉しそうにこう言った。
「XXXX!xxXXXXXXXXXX!!」

xxは、なぜかとても幸せだった。