虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

~悠華side~ 

十つある結界を次々に壊していくが、どこにも千鶴がいない。

「どこにいるんだろう?」

心配そうに由和がキョロキョロと周りを見渡す。

「全く気配が感じられない。あと一つでかい結界があるね」

「哉って、千鶴の気配覚えてるんだ」

瀬和に言われて、ふと思った。

「気配、ね。千鶴じゃなくてもいいから、人の気配探れそう?」

「無理だな。千鶴ちゃんと同じように消されてる」

気配じゃ探れないなら、もう感覚で探す、か。

「瀬和、どこにいると思う?」

「・・・こっち」

「瀬和って運、強いよね。あと、勘がいい」

由和が誇らしそうに言う。

だが、瀬和は眉を顰める。

「絶対ってわけじゃないから、そんなに万能ではないんだよね」

だから千鶴がいるかはわからない、と呟く。

瀬和の勘に縋るように進んでいくと、ある大きな扉が見えた。