虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

泣いたことはなかった。

つらいこともしんどいこともたくさん、たくさんあった。

だけど、泣かなかった。

泣いたら、負けだと思って。

人の優しさに触れて泣きそうになるのは、その優しさに意味があると知ったから。

私がこんなにサキに心を許せているのは、あの人たちに出逢って優しさに、好きを知ったから。

目の前がぼやけていって、冷たいのが頬を伝う。

「っ、変わったんだっ、あの人たちに出逢ってっ、優しさを、好きって気持ちを知っちゃったっ」

「うん、うん」

サキは頷きながら優しく頭を撫でてくれる。

「私っ、離れないといけないってっ、わかってるの、でもっ!!」

涙が止まらなくて、気持ちがあふれ出して、拙く言葉を紡いでいく。

「でもっ、あの場所でずっといたいって思っちゃうのっ」

「うん、そうだね。あったかい場所にいたいよね」

サキは私が泣きつかれるまで傍で頭を撫でて続けてくれた。

「明日、ゆっくり考えるといいよ」

意識が薄れていく中、サキが私の前髪に触れた気がした。