虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

「それって鬼頭たちが可哀そうだね」

「え?」

「だって、大切な人に何も言われず、もう一生会えないとかさ。悲しいし、つらいじゃん」

「そう・・・でしょうか」

「そうだよ。まあ、千鶴ちゃんがどうしようと僕には関係ないしね」

サキは一息つき、私の頭を撫でてくる。

「千鶴ちゃんがどうしたいかが問題だと思うよ。千鶴ちゃん、もう一度聞くけど帰りたい?」

サキは真剣な顔つきで問う。その瞳は、私が「帰りたい」と言えば帰してくれるんだろうし、「帰りたくない」と言えば守ってくれるのだろう。

真剣な瞳がただつらくして俯く。

「・・・どうすべきなんでしょう」

やっとの思いで絞り出した声は、掠れていて情けなかった。

「いいよ、考えなよ。時間はまだあるんだから」

サキは困ったように眉を下げ、優しく微笑んでいた。

そんな顔を向けてもらえる資格なんてないのに。

巻き込んでしまったのは、私の方なのに。

「まあ、寝ときな。また明日考えればいいよ」

そんなサキの優しさに泣きそうになった。