虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

「わかったぞ!」

 バン!とドアが開く音が鳴った後に、哉の声が部屋に響く。

 哉の声はどこか、焦っている。

「千鶴ちゃんを攫ったやつは、陰陽師だった結崎(ゆいざき)家の次男・早樹(さき)だ!」

 陰陽師の結崎家、ね。

 あやかしの中でも恐れられていた四家の一つである結崎家。その次男。

「次男って先祖返りで結界とか張れるやつだろ?やばいんじゃないか?」

 話を聞いていた瀬和が真っ青な顔で部屋に入ってくる。

「探すのが大変だろうな・・・・・・・普通なら、な」

 あやかしの中で最高頂点にいたと言っても過言ではなかった鬼。

 鬼の補佐をしていた妖狐。その妖狐は鬼が消えたときは、次の最高頂点に立つと呼ばれていた。

 そして、鬼に救われたことで鬼に子孫共々尽くすと決めた雪女。

 その末裔たちがいるんだ。

「さて、我らのお姫を迎えにいきますか」

 哉は少しふざけたように、でもその声には怒りが含まれている。

「そうだね、なんなら再起不能にしてみる?」

 笑顔で毒を吐く瀬和の顔は、冷たく周りの空気を凍らせてる。

「いいね、顔面とか特にさ」

 口角をあげなて目を細める由和の顔は美しくも、瀬和と同じように冷たさが溢れ出ていた。

「じゃあ、千鶴を連れ戻そう」

 千鶴、千鶴はちゃんとみんなに愛されてる。

 千鶴が必要なんだよ。俺達には。