虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

 あのときだって、すぐ行動できればあんな終わり方はしなかったはずだ。

 俺はずっとあの頃のままだ。

 さっきだって、瀬和に言われて気づいた。

 本当にどうしようもない弱虫だ。

 今回こそは後悔しないように。

 サッと立ち上がり、部屋を見渡す。

 静かな部屋。

 俺が何かするごとにコロコロと表情を変える君。

 ここに来た頃は、ずっと無表情。

 でも、よく見ていると無表情じゃないことがわかる。

 それがどうしようもなくうれしくて、愛おしくて抱きしめたくて。

 それができないと思うとギュッとつかまれて、締め付けれる。

 「千鶴を迎えに行くのにこんなんじゃ駄目だ」

 男がいた場所を見つめる。

 あいつは、ここに入ってこれた、ということは何かあるのだろう。

 ・・・例えば俺みたいに何かの末裔だったとか――。

 「まあ、それが一番厄介で、可能性が高いか」