虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

 彼女が連れ去られて、動くことができなかった。

 どうすべきなことぐらい分かってる。

「・・・瀬和、この屋敷の入り込めるやつは限ってくる。調べれるか?」

「うん。それでこそ、悠華だね」

 瀬和の言葉で思い出した。

 千鶴が俺にしてくれたことを。

 千鶴は、俺をちゃんと見てくれていた。

 気になっていたことがあった。

『今は、いますよ。ずっと、なんて約束はできませんけど』

 今はいるって言葉にずっと、ずっと目を反らし続けた。

 この屋敷から出ることはできないと思って。

 抱きしめていたはずの千鶴は一瞬で黒いマントの男の腕の中にいた。

 一瞬で消える。

 これは、千鶴と初めて出会ったときもそんなことがあった。

 さっきまでそこにいたと思えば、いつの間にか消えていて、屋敷中探しいてもいなかった。

 強引に聞くと嫌われると思って結局、何も聞かずに今日まで迎えていた。

 こうしてればよかったと、思うのはいつだって過去のことで、どうしようもないことだった。