虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

~悠華side~ 

 千鶴が黒いマントの男にさらわれた。

 千鶴は目をつぶっていて、手は垂れ下がっていた。生きているのか、ただ眠っているのか。どっちなのかさえ、わからなかった。

 さっきまで、抱きしめていたのに。

 千鶴の体温を求めている自分がいる。

「悠華?どうした?」

 哉に話しかけられて我に返る。

「千鶴がッ、連れ去られてッ」

 哉は顔を青ざめ、勢いよく外へと飛び出した。

「・・・見損なった」

 冷めた声が後ろから聞こえてきて、よろよろと振り向く。

「何?千鶴がいなくなって、そんなんでいいの?悠華が迎えにいかなくていいの?」

 瀬和は基本誰にも心を開くことがない。でも、千鶴にはよく笑っていた。

「千鶴のこと、好きなんでしょ?」

 瀬和が気づいてるのに千鶴は俺の好意に全く気付いていなかった。

 そのくせ俺の弱さを包み込むように抱きしめてくれた。

 なのに、俺はどうだ。