「いや、ものすごく不可解だけど悠華さんってきれいですよね」

まさか、そんなことを言われるとは思っていなかったから進んでいた足が止まる。

そして、徐々に口角が上がっていくのがわかる。

そんな情けない顔を千鶴に見せたくなくて、口元を手で覆い隠す。

「どうしたんですか?」

急に立ち止まったことを不思議に思ったのか、千鶴が少し心配そうに聞いてきた。

そのことで俺の口角を上げていっていることがわかる。

本当に黙ってほしい。

千鶴は本当にかわいいことを自覚していない。

そのせいで、周りが犠牲になるんだ。

でも、犠牲になるなら俺だけでいい。

俺だけが千鶴のことを知っていたらいいんだ。

「いや、なんでもない。行こうか」

俺はやっと気持ちの整理がついて千鶴に笑いかける。

「変な悠華さんですね」

そう言って、俺の手に千鶴の手がからまる。

「・・・今回だけですからね」

千鶴を見てみると、顔を真っ赤にし下を向いていた。

それがものすごく可愛かったことを千鶴に言ったら、また反論されるんだろうなと考えながら千鶴の手を握り返した。