「じゃあ、悠華も瀬和（せわ）に色々してもらいな」

瀬和は、哉さんと同じく悠華さんの執事兼悠華さんの左腕みたいな感じだ。

（瀬和も男の人なんだよな）

悠華さんは子供みたいに頬を膨らまして文句を言いながら出ていった。

「じゃあ、千鶴ちゃん。悠華を驚かそっか」

「えっ、嫌です」

驚かすって、可愛くするってことだよね。

それはいやだ。可愛いとも思われたくない。

「まあまあ、とりあえずオシャレしてみよ？」

哉さんはニコッと笑いクローゼットの前で手招きをする。

私は渋々クローゼットの前まで行く。

「どんな色がいい？」

「できたら目立たない色がいいです」

目立たなかったら哉さんが決めた服でいい。

目立たなきゃなんでもいいのだ。

「じゃあ、紫にする？」

「じゃあ、それで」

哉さんが見せてきたのは、薄いピンクに紫の蝶が描かれている着物だった。

目立たなそうだったから即答すると「なんでもいいって感じだね」と笑われてしまった。